リヴァイ短編

□forgive
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宿舎にはとても大きな木がある。
俺が来る前から、エルヴィンが入る前から立っていると聞いた。
その木は昼間、宿舎の庭に大きな影を作る。少しくらい暑くてもその影にいれば心地よい気温が庭を覆う。

通り風が抜け、木々がざわめく。
太陽の光が葉から漏れ、時々影の中に光が射し込む。





For give







誰も居ないことを確認して、その木に登る。
一人になりたい時、この木に上る。庭に来る人間はそもそも居ないが、一度木の下で寝そべって居たときは何かあったのかと、オルオが血相変えて飛んできたことがあった。


それ以来、人目につくところを避けた結果、この上になった。
立派な木なので枝も太く、人一人支えることくらい余裕だった。





「くぁ・・・っ」



大きくあくびをして、ぐんと伸びをする。
同時に深呼吸をして呆然と前を見る。
余り視点が合ってないのは自分でも解るが、ただ前を見て、目に入る物を情報として捕らえていない。




「疲れてんだよ。」




調査から帰ってもう一週間になる。
今回も沢山死んだ。死までに行かずとも手足を失った奴。
巨人の恐怖で再起不能になった奴。
毎回の事とはいえ、俺の名を呼びながら。俺に巨人を倒してくれと言いながら。




死にたくないと、言いながら。
死にたくないと、泣きながら。
死にたくないと、絶望しながら。




死に絶えていく部下達を看取るのは何度危機を迎えても。
何度、あいつ等に恐怖しても。



拭いきれるものではない。





「くそっ・・・」


自分の無力さに腹が立つ。
何が人類最強だ。
何が俺一人で旅団並の兵力だ。





俺に期待するな。
俺に尊敬の目を向けんな。





俺に、希望を託すな・・・。






風が通り抜ける。
さわさわと葉が揺れて木漏れ日が俺を照らす。


その光が疎ましくて俺は目を閉じた。




耳障りがする。
目を閉じているのに光景がフラッシュバックする。









「ヘイチョウ、マダ、シニタクナイヨ」





死んでいった奴らの顔が浮かぶ。声が聞こえる。
ざわざわと揺れる木の音ですらあいつ等の声に聞こえる。
頼む、静かにしてくれ。





まだ俺は戦うから。
お前等の敵をとってやるから。
奴らを、駆逐してみせるから。





照らす木漏れ日が鬱陶しくて腕で顔を覆い隠した。





と、ざわめく木々の音の中から、小さな音が聞こえた。
ポロン、ポロンと柔らかい音が聞こえる。


何の音だろうと辺りを見てみると、木の下に 名前が座っていた。
宿舎の庭なのだから、調査兵の誰かだろうとは思っていたが。



名前は木に背を預け、足の上に鍵盤を乗せている。
あぁ、そう言えばこの間息を吹き込む事で音を鳴らす楽器がどうだと、エルヴィンが言っていたことを思い出す。



ポロン、ポロンと単調ではあるが楽器が紡ぎ出す音はとても柔らかて、耳に残る。




「名前」




木の上から名前を呼ぶと、びくりと肩を振るわせて左右に首を振る。
ここだ、と言うと顔を上に向け俺を確認する。




「あ、リヴァイ。
どうしたの?そんなところで」



思いにフケっていた、とは言いたくなくて下に向けていた顔を戻して「別に。」と答えた。





今は1人になりたい。
後悔も懺悔も。誰にも聞いて欲しくない。



俺の解答に、あっそ。といって 名前は楽器を鳴らしだす。



柔らかい音色。
ゆっくりとした曲調。



たまに失敗する、音。






失敗したときに少し 名前が唸るので、視線だけ下にやると指だけ鍵盤の上で動かし、数度繰り返すと再び音を吹き込み出す。



その音色をしばらく聞いていると 名前の声が聞こえた。



「ね」
「あぁ?」
「頑張って弾くから聞いててね」
「さっきからその、下手くそな雑音聞かされてる」




もう!と言った後、楽器を鳴らす。単調な曲なのに


















とても心に染みた。
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