リヴァイ短編

□Fly
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空を眺めると、鳥が自由に飛んでいる。
巨人の脅威が無い、人類以外の生き物は自由に壁の外へ羽ばたいてゆける。




それは、どんなに素晴らしいものなのだろうか。




どんなに、自由で、広大な大地や空が広がっているんだろう。



一度でいいから見てみたかった。
絵本や、おとぎ話に出てくる「ウミ」という大きな水溜りも見てみたい。
「サバク」といわれる砂に覆われた大地や、たくさんの動物が翔ける野原も見たい。








自由に、この壁を越えて外の世界へ行ってみたい。








「おい、名前。でっかい口空けて何してるんだ?阿呆ヅラが更に阿呆に見えるぞ」


木の上から立体起動を使い降りてくるリヴァイ。
胸元で止めたマントがふわりとゆれてそれがとても羽のように見えた。








「羽、ってゆっても緑じゃね・・・」
「あ?」








緑色の羽も素敵だけれど、自由の羽は白いほうがいい。





「リヴァイ」
「何だよ、さっきから」




壁の外に出たい。そんな理由から私は調査兵団にはいった。
後悔なんてしていないし、するつもりも無い。
巨人は怖いし、仲間が食われる姿を幾度も見てきた。
敵を撃ってやろうとも思うし、いつか巨人を全部退けて本当の自由を手に入れたい。






でもそれは本当に自由?









「自由って、どう言う事だと思う?」
「・・・あぁ?哲学の話がしたいのなら俺じゃなくてエルヴィン辺りに言え。妄言ならハンジに言え。」









小さくため息をついて、空を見上げる。横目でリヴァイも空を見上げたのが目にはいった。





「私ね、自由に空。飛んでみたいの」





両手を空に伸ばしてみる。
届かない雲に、太陽に。





「それでいつか、壁の外に自分の足で歩いて出て行ったり。
何日もかけて外の世界を冒険してみたり、いろんな事がしたい。」







こんな小屋の中で終わりたくない。
外の世界を知ってしまったから。
今は巨人がいて、昔とは違う外の世界、だけど。








「本当の意味で「自由の翼」が欲しい」












「空くらい、いつでも飛べるだろうが」



そう言ったリヴァイのほうを見ると同時に視点が下がりぐんっと上に身体が引っ張られた。


「ぅ、あ、ちょっと!」
「しゃべると舌噛むぞ」


バシュッ、バシュッとリヴァイが立体起動装置を起動させながら移動する。
私を横抱きにして。


一番高い木のしっかりとした枝で止まった。
自分で動かす立体起動の移動とは感覚が何か違うなぁ、と思いつつようやく止まったリヴァイの顔を覗き込んだ。








いつも冷めたような目つきをしている彼が、少し遠くを見るように。
寂しそうに、していた。







「なぁ名前。
俺は正直自由になんかならなくてもいいと思ってる。」
「・・・どうして?」




ほんの少しだけ、リヴァイがまぶたを伏せる。
私を肩を抱く手に力が篭った。







「自由になっちまったら、お前は俺を置いてどっかにいっちまいそうだからだ。

俺には巨人をぶっ殺す以外何も無い。
でもお前は違う。
巨人がいなくなっちまって、兵士が必要なくなったら俺は必要なくなる。
だから、俺はお前を繋いで置きたい。


俺の価値なんて所詮、巨人をぶっ殺す為だけにあるモンだって、解ってしまいたくない。」






普段弱音なんか言わないのに。
今にも泣きそうなリヴァイの声に私は微笑んだ。
彼のマントをそっとつかんで身体を彼のほうに預ける。




「リヴァイの価値は人に決められてしまう物なの?」







首をかしげる私から目を反らした。
いつもなら此処で憎まれ口の一つや二つ言う彼が何も言わずに視線をそらした。






ああ、なんだ、そうか。
知らないんだ。

他人が、自分の価値は巨人を殺す為にしかないと思っている。
それ以上も、それ以下も求めていないと思っている。









そんなこと


ないのに。










「じゃあ、私がリヴァイの価値を決めてあげる。」

「はぁ?お前がお」

「リヴァイの価値は、約4000人の兵力分で、掃除が大好きな所は多分調査兵団全員を合わせても足りないぐらいで。」


「・・・」




「そして、私のたった一人の大事な人」



顔を近づけておでことリヴァイの頬をくっつける。





「価値を決めなきゃ駄目なら私が決めてあげる。
誰かが決めてしまっても、私がまた新しく決めてあげる」





だから






「私の価値も、あなたが決めて」







本当の自由の翼を手に入れて、外の世界に飛んでいってしまっても。



手を伸ばして、私を。






捕まえて見せて。

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