最遊記
□Be realized
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「ただいまー。」
部活から帰った悟空は汗の伝う顔をジャージで拭い玄関にあがる。家の中は何とも静かだ。
それもそのはず、長兄の三蔵は高校三年生で受験を控え猛勉強しているのだから。
何でも急に進路を変えたらしいから選択していない教科を独学しているそうだ。おかげで家で三蔵をみる機会が格段に減ったと思う。
「お。」
「あ、」
じっと見つめていた部屋の向かいから出てきたのは三兄の悟浄だ。
「ただいま。」
「おう、おけーり。」
最近、こっちの兄ともどこか気まずい雰囲気があると悟空は思う。
それは正確に言えば"悟空と"ではなく"悟浄の周り"で起きていることだ。
現に悟浄はもう割と遅い時間なのに服装は出掛け着で、その足は悟空とは反対側に向かっている。
「出掛けんの?」
「あぁ。何?」
「いや、どこ行くのかなーって。」
そう聞くと悟浄はいつも
「…女のトコ。」
そう言って最近悟空が肌寒い恐怖を感じるようになった笑みを浮かべて行ってしまうのだ。
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