SS(本)

□トリ蒼でAVを見る(R18)
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「ただいまー」

近くで聞き慣れた声が聞こえて、蒼葉の瞼がゆっくりと開かれる。
そっと髪を撫でられる感触。心地良い。
まだぼんやりと揺らぐ視界にはもう、見慣れた顔があった。

「ん……ウイルスは?」

珍しく、一人だけの気配しかない。
しかし開口一番、蒼葉の口から自分ではなく違う男の名前が出たことが不満だったのだろう。
ウイルスではない方、トリップは無表情のまま、寝ぼけ眼の蒼葉に噛み付くようにキスをした。
血が出ない程度に、蒼葉の柔らかな唇に歯を立てる。

「いっ…てぇよバカッ!」
「俺におかえりは?蒼葉」

痛みで完璧に覚醒した蒼葉がたまらず睨みつけるも、今度は噛んだ場所を癒すように舐められて優しく唇を重ねられる。
そこに更にねだるような声と目を重ねられると、蒼葉の瞳が緩んでいく気配。
自分に覆いかぶさる大きな背中にゆっくりと手を回して、蒼葉はトリップを抱きしめた。

「…おかえり、トリップ」
「ん」

トリップの背中を抱いたまま、蒼葉から触れるだけのキスをする。
これで満足しただろうとトリップから離れようとすると、今度は強く唇を押し付けられて貪られた。
思わず、トリップに回していた蒼葉の腕の力が強くなる。
熱い舌と舌が重なって溶けた熱が体に回り、意識まで溶けてしまいそうになる感覚。
これからの予感にざわつく体をトリップに預けようとしたのに、何故かトリップは蒼葉から離れていく。

「ふ、ぁ…っ?」
「…っと。ホントはこのまま蒼葉抱きたいんだけど、今日は違うことするんだった」
「…は?」

きっと無意識だろうが、離れていくトリップを追う蒼葉の表情は寂しげなものだった。
可愛い。けれど込み上げてくる衝動もぐっと堪えて、トリップがベッドボードで何かを探し始める。
結局我慢出来ずに、また蒼葉に顔を寄せてキスだけをしながら。

「ウイルス帰ってくるまで結構時間かかると思うし、一緒に見よ」

ベッドボードにあるスイッチをトリップが押すと、天井から大きなスクリーンが降りて来る。
これは、映画をよく見るウイルスが付けたものだ。

「ん?映画でも見んの?」
「まぁ、そんな感じ」
「何だよそれ。つか、ウイルスじゃなくてお前が映画なんて珍しくね?」
「そ?前からこれ蒼葉と見たいと思ってたし」
「へー?」

普段映画をあまり見ないトリップが自分と見たい映画、一体どんなものだろう。
蒼葉は結構わくわくしていた。
部屋の照明を落としてから、トリップが後ろから蒼葉を抱きしめてくる。
蒼葉もトリップに身を預けてスクリーンを見つめた。
ぱっとスクリーンが明るくなり、映像が映った瞬間。

「は……ああああああっ!?」

蒼葉は己の目を疑い酷い叫び声を上げたのだった。
それもそのはず。
目の前のスクリーンに映し出されたのは、全裸の女性。
しかも、モザイクなし。

「ちょおおお、おいっ!何流してんだトリップ!」
「AV」
「えっ、えーぶ…ってお前っ!映画じゃなかったのかよ!」
「似たようなもんじゃん。何?蒼葉初めて?」
「んんなわけねーだろっ!」
「じゃあいいじゃん。一緒に見よ。これ、蒼葉と見たかったんだ」
「な…っ」

とか言ってる間にも、画面は淡々と進んでいく。
タイトルが終わって服をきちんと着直した女性が、明らかに怪しい男に個室でインタビューを受けている場面。
トリップに言った通り、もちろんAVを見るのが初めてな訳じゃない。
でも実際見るのは久しぶりだし、しかもこんな状態だしコイツとだし。
昔は一体どうやってAVを見ていたんだろう、なんて考え始めてしまって、無駄に緊張してしまう気がする。

「こういう前置きいらねー。早く始めろって思わね?」
「っ!」

蒼葉の肩に顎を置いて、トリップがつまらなそうに呟く。
吐息が耳に触れて震えそうになる体を抑えるように、蒼葉は必死に画面に集中した。
そして今更気付く。この女性が、びっくりする程巨乳であることに。
たゆんたゆん。服を着ているにも関わらずそんな効果音が付きそうな程、動く度に豊満な胸が上下に揺れている。
男の性なのか、蒼葉の目はもうその胸に釘付けだった。

「つか、お前…巨乳が好きなの?」
「んー?まぁ、嫌いじゃないんじゃね?ないよりはあった方がいいよなぁ」
「はぁ?じゃあなんでこれ選んだんだよ。明らかに巨乳好きのチョイスだろこれ」
「知りたい?」

トリップの目が細められて、唇がにやっと笑みを描く。
つつ、と指先で脇腹の辺りを滑るように撫でられ、思わず声が漏れそうになるのを我慢する。
笑んだままのトリップの唇が、蒼葉の耳へ寄せられた。

「蒼葉と、似てるから」
「ん…っ!」

言葉と一緒に耳裏をべろりと舐め上げられ、耳たぶをちゅっと吸い上げられる。
もう我慢出来なかった。体が震えて、甲高い声が鼻から抜けてしまう。
改めて、画面の女性を見つめてみる。けれど、トリップから言われた言葉に違和感しか感じられなかった。

「どこがっ、似てんだよ…っ!」

お前の目は節穴か。そう思った。
顔も髪も声も何もかも。どこをどう見たって似ていない。
というかまず性別すら違うというのに。
蒼葉の言葉に一度画面を見てから、トリップが小首を傾げた。

「…雰囲気?」
「いやいや全然似てねーよ!しかも何で疑問系だよ!」
「前はよくこれ見て抜いてたんだよね。蒼葉のこと思い出しながら」
「ば…っ!」

いきなり何を言い出すんだ。何の報告だ。
蒼葉の顔が一気に耳まで赤くなる。

「そ、そういうこと普通本人の前で言うか?!カバっ!」
「だって本当のことだし。これ見ながら、蒼葉に触ったらこんな声出すのかなーとかこんな顔すんのかなーとか想像したらすげぇ興奮する」
「や、やめろって!もうそれ以上言うなっ!」
「でも蒼……ん」

もう仕方がなくて。
蒼葉は自らの唇でトリップの唇を塞いで無理やり黙らせた。
トリップの腕がそんな蒼葉の背中に回されて、強く抱きしめてくる。
また、熱く唇を食まれた。それに応える。くちゅくちゅと湿った水音が聞こえた。

「…もう、余計なこと言うな」
「ん」

やっと唇を離される。
トリップと目を合わせたまま、子供に言い聞かせるみたいに蒼葉が言った。
トリップが短く返事をした後、それに小さく頷く。ちゅっと触れるだけのキスをしながら。

「ま、蒼葉と一緒にこれ見たかったっつーか、前見てた時は想像するだけだった蒼葉が今はこうして傍にいるって、俺が実感したかっただけなんだけど」
「だからっ……はぁ。お前って、ホント恥ずかしいこと恥ずかしげもなく言うのな」
「そ?俺は全然恥ずかしくなんかねぇけど」
「もういいっつの…」

コイツには何を言ってもダメだ。
顔を抑えて蒼葉が溜息を吐くと、それすら食べようとトリップがまたキスしてくる。
それを甘受しながら視線を画面へ映すと、画面の中でやっと、女性が脱がされ始めていた。

「お。やーっと始まった」

遂に露にされる、豊満な胸。形も、色も綺麗な気がする。
やっぱり男の性なのか、蒼葉はそこから視線を外せなくなった。
ごくり、と大きく唾を飲み込む音が自分で聞こえた。

「つーか、蒼葉こそおっきいのが好きなんじゃねーの?」
「ばっ、ちが!これは…っ」
「俺は、蒼葉のぺったんこな胸が一番いい」

だからどうして、コイツはそういうことを平然と言えるのだ。
蒼葉の顔が二重の羞恥で再び朱に染まる。

「お前はホントっ…あ…っ!」

シャツの中に下から腕を突っ込まれて、トリップの指先にまだ無反応だった乳首の回りををそろそろと撫でられる。
それだけで蒼葉の乳首はプクリと膨らみ、トリップの指に囚われた。
摘まれてクリクリと小刻みに回されると、快感がピリピリと全身に走り出してしまう。

「感度いいし綺麗だし可愛いし」
「んっ、うる、せ…っぁ…」
「もうこっちも勃ってる。女の裸久しぶりに見て興奮した?」
「は…っ」

違う。そうじゃない。
けれど本当の理由なんて言えない。言いたくない。
トリップの指が、既に勃ち上がり始めていた蒼葉の熱を下着の上からゆるゆると撫でた。執拗に乳首を弄りながら。
じわ、と蒼葉の下着に小さな染みが出来る。
直接的な快感に震える蒼葉の唇に、またトリップが噛み付くようなキスをした。

「いっ…ん…っ」
「ちょっと妬ける」

そう呟きながら蒼葉を見つめるトリップの瞳の奥は、静かに嫉妬に燃えているように見えた。
体がゾクゾクする。下着にまた染み付いてしまう気配。トリップの目から、目を離せなかった。

「蒼葉、やらしー」

トリップが蒼葉をシーツへ沈め、足を左右に押し広げて笑った。
下着を押し上げる熱とその先に出来ている染み。扇情的な光景。
下着の上から蒼葉を握って、絞るように上へ指を滑らしていく。

「あ…っ!や、だ…っ」

また、じわと染みが大きくなった。蒼葉が感じているという証拠に、トリップの笑みが深くなる。
下着の上からその染みた部分にちゅっとキスしてから、下着をずり降ろす。
蒼葉は口だけでしか抵抗しなかった。
トリップが蒼葉の熱を直接握りこみ、そこへ顔を寄せる。
自分も持っているはずのこれが、まるで違うもののように見えるのは何故だろう。
嫌悪感などなく、むしろ可愛いとか愛おしいとか思ってしまう。
でもその答えはトリップにとっては実に簡単なものだ。
蒼葉だからだ。
トリップは笑ったまま蒼葉の先端へふうっと軽く息を吹きかけた。
手の中の蒼葉と白い太股が、ヒクヒクと痙攣するように震えた。

「蒼葉のも舐めてやるよ」

トリップの言葉と同時に、女性の甲高い声が部屋に響いた。
ぴちゃぴちゃと生々しい水音と一緒に。
蒼葉がはっとしてスクリーンへ視線をやると、自分と同じようにだらしくなく足を左右に開いた女の股の間に男が顔を埋めている場面。

「嫌だっ…あっ!」

自分がスクリーンの中のそれと重なるのが嫌で、トリップから逃げようとする。
けれど、トリップの熱い舌にベロリと根元から舐められると途端に何も出来なくなった。
熱が一点に集まって、快感。これを拒絶なんて出来ない。そういう体になってしまった。
硬くなった蒼葉の茎を、トリップが何度もベロベロと舐めあげる。たまにちゅうっと音を立てて吸いながら。

「蒼葉ガッチガチ。かわいー」
「あ…っ、あ!」

まるで好物を頬張るみたいに。嬉しそうに。
トリップは蒼葉のそれをぱくりと口内に含んだ。
唇で蒼葉を挟んで、わざとじゅるじゅると大きな音を立てて吸い上げる。
舌で蒼葉を舐め回すことを忘れずに。
すぐに蒼葉の先から塩味のある液体がとろとろと溢れてきて、余計に蒼葉を食べてやりたくなる。
トリップは蒼葉を頬張ることに夢中になった。

「は…っ、やめっ、あ…ッ、トリ…っ」

蒼葉はトリップの頭を掴みながら、必死に快感を堪えようとしていた。
でもやっぱり抑えきれない。声も体の震えも。
画面の女と同じように喘いでしまう自分。嫌なのに、我慢できなかった。

「蒼葉、だらっだら。きもちいい?」

トリップの唾液なのか蒼葉の先走りなのか最早解らなくなった透明な液体を、ベロリとまた根元から舐めてトリップが笑う。
それにぐっしょりと濡れ、ぬらぬらと光りながら硬く勃ち上がっている己など見ていられずに蒼葉が視線を外した。
その先で、ニヤニヤと笑うトリップと目が合う。
蒼葉に込み上げてくる感情は、羞恥よりも悔しさが先だった。
いつも自分ばかりこうなって、常に余裕綽々なコイツが腹立たしい。久々に思い出した男の性の名残なのかもしれない。
そんな蒼葉が、既に反応しているトリップの下肢に気付く。今度は蒼葉がニヤリと唇を吊り上げた。

「…じゃあ、今度は俺がやってやるよ」
「お。蒼葉積極的ー。やっぱ興奮してる?」
「ちげーよ」

トリップを黙らせるように反対側に押し倒して、急ぐ手つきでベルトを抜きファスナーを下ろした。
トリップの下着が大きく膨らんでいるのを目にして、蒼葉の負けん気が更に強くなる。
勝ち誇った表情をして、蒼葉はトリップを見下ろした。

「何だよ、お前だって興奮してんじゃねーかよ」
「蒼葉とAV見てんのにしてないと思った?」
「だ・ま・れ!」

本当に、いつだって余裕綽々な態度が憎たらしい。
どうにかこいつを崩してやりたい。
ちらりと見た画面でも、女のそこをしゃぶりながら股間を膨らませている男が映っている。
AVと目の前のこの現実の落差。
蒼葉はまたニヤと笑み作って、下着の上からトリップの昂ぶりをぐっと握った。
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