赤い糸
□異世界で
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「えぇ?!それってSFじゃない!」
「ジョディ、声が大きい」
「あ…ごめんなさい。でも、」
「気持ちは分かるが、本人が一番動揺しているんだ。落ち着け」
「……それはそうね。舞さーん、聞こえてる〜?」
連れてこられたのは、駅から少し離れた路地裏の小さなカフェ。
ダウンライトが暖かく照らす店内にジャズのメロディが流れ、テーブルや椅子はアンティークで揃えてある、とてもお洒落なお店…なんだけど。
私は突然の事態が消化不良で、それらを楽しむ余裕は無かった。
というのも、駅での一件に加え。
赤井さんの申し出で持ち物を全部見てもらうと、携帯電話やバッグの有名なブランド名すら通じず。
大学は存在が確認されず。
極め付けに、幾つか有名人や時事問題に関する質問もされたんだけど……その会話の噛み合わないこと!
そう。
まるで、私だけが違う世界へ来てしまったみたいに─────
……なんて、そんな摩訶不思議をすぐに理解出来る筈がない。
さすがに、もう冷静になる事なんて不可能で。
抑えていた不安と恐怖が溢れ出して、胸の中でとぐろを巻いている。
私、どうなっちゃうんだろう……
「舞さん!」
「はっ、あ…すいません」
ジョディさん───赤井さんの同僚で、ブロンドのショートヘアに大きな眼鏡が似合う女性、ジョディ・スターリングさんの手が、目の前でひらひらと揺れていた。
いけない、いけない。
親身になってくれている人達がいるんだから…
もう少し、頑張れ、私。
「不安なのは分かるけど、私達はあなたの味方よ。何でも協力するわ」
「ありがとうございます」
「とりあえず、元の家に帰れるまで、どうやって暮らすか決めましょう」
「はい…」
「それでね、提案があるんだけど。シュウのホテルに泊まるのはどう?」
「え?赤井さんの…?」
「私達、ホテル暮らしなのよ。本当は女同士、私が側にいてあげたいんだけど…仕事の都合で、ちょっと出来なくて」
「俺の部屋の隣が空いていたから丁度いいだろう」
「でも私、お金が…」
「お金の心配ならしなくて良いわ。私達が工面するから」
「でも…」
「申し訳ないが、助けたのが俺だった不運と思って、言う通りにしてほしい。
後で詳しく説明するが、君の安全のためでもあるんだ」
「ごめんなさいね…お金の事が気になるなら───ねぇ、シュウ。ボスにこの子を本部で雇えないか掛け合ってみたらどう?」
「あぁ、俺もそう考えていたところだ」
「雑用ばかりになると思うけど…FBIの捜査本部であなたを一時的に雇えるよう手配してみるわね。そしたら、お金の心配も減るでしょう?」
「そ、そうですけど…いいんですか?」
「勿論!」
何だか、ホテル暮らしとかFBIとか、話の枠組み自体が別世界のもののようで──実際、ここは異世界なのだけど。
現実味がなくて、どう答えるべきなのか見当もつかない。
でも、私の安全のため…とまで言われて、反抗する理由もなくて。
だったら───────
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