赤い糸

□邂逅
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「神様、どうか私に仕事をください!」







黄昏時、人気のない神社。

私の悲痛なお願い事に応えてくれたのは、お社の両脇に植わった木々のざわめきだけだった。













「…余計虚しくなっちゃった」


キャンパスライフも終盤を迎え、私もめでたく就活生。

けれど、この就職難の中、私を雇ってくれる会社は簡単に見つからない。

面接の帰り道、偶然見つけた神社へ藁にもすがる思いで立ち寄ったんだけど…

我ながら情けないなぁ。


あーあ。


こんな事なら、今までもう少し頑張っておけば良かった。

もっと有名な大学に入るとか、せめて大学で良い成績を取っておくとか。

そしたら、今頃……


なんて、考えていても仕方ないよね。



ふと辺りを見渡すと、茜色の空がすっかり景色を濃く染めていた。

少し背筋の寒くなるような、赤色の世界。


逢魔が時の、光景。



「…冷えてきたかも」


身体がぶるりと震える。

最後にもう一度、ちゃんとお願いして帰ろう。

"仕事をください"じゃなくて、こういう時は────


お社に向き直り、ガランガランと鐘を鳴らす。

二礼二拍手、そして目を閉じて。



「素敵なご縁に導かれますように」



一礼。


こういう時は、縁結びのお願い事。

人事を尽くして、天命を待つ。

頑張って就活していれば、きっと良い所に巡り会えるはず。


そう信じて、私はお社に背を向けた。

そして鳥居をくぐり、メールを確認しようとスマホの画面を開く。


「…ん?」


画面の左上に『圏外』の文字。

こんな都会で圏外なんて…ビルの陰か何かの理由で難受信地帯になっているのかな。

とりあえず元来た道を辿るように歩きながら、携帯を空に翳してみたり、通信の設定を弄ってみたり。

だけど、一向にアンテナが立つ気配はない。


「暫く放っておくかぁ」


諦めて顔を上げる。


……あれ?

こんな道、通ったっけ。


っていうか。


携帯に夢中で気付かなかったけど…



ここ、どこ────?




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