赤い糸
□邂逅
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ああ、もう。ついさっき歩いてきた道を間違えるなんて…そんなに方向音痴だったっけ。
なんとか大通りを見つけられたものの、人通りは無い。
立ち往生するのもあまり良い案とは言えないし、道沿いに歩いてコンビニでも見つけるのが得策かしら。
…と、安易な考えの下に歩いていたら、案外簡単にコンビニらしきお店を発見できた。
なになに、『サンデーマート』…?
初めて聞く名前。
ローカルな個人経営店かな。
道だけ聞くのも図々しいと思って、店内を軽く物色してみる。
すると面白いことに、見た事もない商品ばかり並んでいた。
有名商品に似たものでも、名前が1字変えてあったりロゴが違ったり。
これって所謂"パクり"商品じゃないの?って、心の中で揶揄しながら一通り見て回る。
あ、地図も売ってる。
これを買って、店員さんに現在地を教えてもらったら帰り道が分かるじゃない。
足早に雑誌コーナーの脇に置かれた地図とミネラルウォーターを手に取り、レジへ向かう。
幸い、レジの店員さんは優しそうな女の人だった。
「すいません。道に迷って、携帯も使えないので、此処の場所を教えてもらえますか?」
「畏まりました」
少し気恥ずかしさを感じながら、店員さんがページを繰るのを待つ。
「此処ですね」
すぐに、店員さんが綺麗な指で一点を指しながら私に示してくれた。
カウンターに身を乗り出して、地図を覗き込む。
「─────え?」
何かの冗談かと思い、店員さんの顔を見上げる。
だけど、彼女はとてもふざけているようには見えなくて。
もう一度、地図を見る。
「杯戸町…」
────って、何処?
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