花吹雪

□或る夏の日のこと
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その時だった。



ザーンと音を立てて、特別大きい波が流れてきたのは。



桜は思わず大きく体勢を崩す。

その勢いで殺生丸の足に強くぶつかってしまった。


普段なら殺生丸も堪えられただろう。

しかし、一瞬の出来事で、しかも突然のことだったからか。



バシャーンッ



水しぶきが弾ける。



その場にあったのは、殺生丸は座り込み、その上に桜が覆いかぶさっている光景。



「「・・・・・・・・・・」」



長いのか短いのか分からない沈黙がやってくる。



沈黙を破るように、桜は我に返った。


「あぁぁぁあっっすすすっ、すいませんっ!!」


慌てふためき、殺生丸からどこうとする。


が、足がもつれてしまい。



ドシャッ



再び殺生丸に抱きつくように倒れてしまう。




桜が顔を上げると、間近にある殺生丸の顔。

その顔色は普段とあまり変わらない。


だが、桜の顔がみるみる赤く染まっていく。


「え、えとっ・・」


殺生丸の視線に絡めとられ、身動きが出来なくなってしまった桜の心臓は早鐘をうっていた。

水に濡れて冷たさを感じるはずなのに、体温が急上昇しているようで。


-----------ど、どうしよう・・そんな見つめられたら・・・


心の中では焦っているものの、体は上手く動かない。



そんな状態で、どのくらいの時が経ったのだろう。



ふわり、と桜の体が宙に浮いた。


「えっ?!」


思考が一瞬停止する。


すぐに、自分が殺生丸に抱えられているのだと知った。


殺生丸は桜を抱えて立ち上がると、ストンと桜を立たせる。


--------------今、何が起こったの?


呆然とする桜。

殺生丸は何食わぬ顔で、服の砂を払っている。


殺生丸は桜の方を見ると、その顔は未だ唖然としていて、頬は紅潮している。


「桜」


「・・・・はっ、はい!」


ハッとして、わたわたと反応する桜に殺生丸は少し目を細めた。


「・・・私を押し倒すとは、良い度胸をしているな」


「・・えぇっ?!す、すいませんっ!わざとじゃないんです!!」


---------やっぱり・・怒っているのかなぁ・・・


桜は恐る恐る殺生丸を見上げる。


しかし、そこには穏やかな表情の殺生丸。

笑顔など見たことがないが、それでもその顔は笑っているようだった。


-------------なんか、からかわれた・・・?


そう思うと、可笑しくなってきて。


ふふっと笑う。



「私たち、びしょ濡れになっちゃいましたね〜」

「・・・・・誰のせいだ」

「ごめんなさいっ」





穏やかな夏の昼下がり。




太陽は煌めく海と、波打ち際で微笑む二人を照らしていて。





真っ白に光る貝が二人の足下で揺れていた。















Fin.






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