花吹雪

□或る夏の日のこと
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「ふぅ・・・りんちゃんはやっぱり元気だなぁ」


苦笑しつつ、桜は邪見と追いかけっこを繰り広げているりんを眺めた。

追いかけっこといっても、殆どりんが一方的に追いかけているようなもので。

時折水のかけ合いに発展する二人の光景は微笑ましいものだった。


そして、桜の顔にも笑みが溢れた時。


サク……


背後から、もう聞き慣れた足音が耳に入る。


桜は再び微笑んで、振り返った。


「殺生丸さま」


その名前を口にすると、ちらと桜を見やる彼。

波打ち際で足を少し水に浸しながら、遠くで戯れているりん達に視線を移す。


その佇まいは普段通り凛としていて。

銀色の髪を潮風に弄ばせていた。


桜はパシャパシャと水音を立てながら殺生丸に歩み寄っていく。

そして殺生丸の横に並んだ。


「もう、出発ですか?」

「・・・構わん」


短いやり取りの後、再びりん達を眺める。


波の音とはしゃぎ声、蝉と遠くの海鳥が奏でる歌を聴いていると、幻想世界にいる様な錯覚を起こしてしまいそうだ。


「何だか・・心地いいですね」


少しまどろんだ調子で殺生丸の方を向く。


殺生丸も桜を見つめる。


桜も柔らかい表情で見つめ返す。


以前は少し恐れていた殺生丸の視線も、月日が経ち、共に闘ううちにちゃんと受け入れられるようになった。



「・・・あっ」


ふと、自分の足元に目をやった桜が声をあげた。

太陽の光を浴びて光るものが水面の下に見えたのだ。


桜はしゃがみこむと、それを手に取る。


「綺麗〜っ」


それは真っ白の貝殻。

形も整っていて、光沢も良い。


桜はそれを上に掲げ、きらきらと輝く様を眺めた。

その様子を静かに見下ろす殺生丸。


その瞳はどこか優しげだった。



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