花吹雪

□St. Valentine's Day
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冬の寒さが身にしみる冬のある日、桜は楓の村に立ち寄っていた。









「久しぶりじゃのう、桜」

「先輩!お久しぶりです!」


「お久しぶり!かごめちゃん達も帰って来てたんだ!」


楓の家の簾を開けると、かごめと楓、珊瑚もいる。


聞く所によると、かごめちゃんは定期テストでここ三日程平成の世に帰っていたらしい。

そしてさっき戻って来たところだという。


それにしても、男性陣の姿が見えない。



「そうだ!先輩もご一緒にどうですか!?」


かごめが目をきらきらさせて桜に声をかけた。



「今日は向こうの世界では2月14日!バレンタインです!」




-----バレンタイン…



「殺生丸に持って帰ってあげたらどうですか?」



---・・・



たちまち桜の顔が赤く染まる。



「わっ私、殺生丸さまとはそんな関係じゃ…っ」

「え、違うの?」

「珊瑚ちゃんまで!」

「珊瑚ちゃんは弥勒さまにだよね♡」

「ちょっとかごめちゃん…かごめちゃんの方が犬夜叉といい感じじゃん」

「わあ、やっぱり二人はそんな仲だったんだね!」

「そうそう!聞いてよ、桜ちゃん。この前ったらねぇ」

「わああったいした事ないですぅーーーー」

「あははっ」


-------た、楽しい…


いつぶりかの恋話に桜の顔はほころぶ。



「かごめ、その甘味とやらは準備出来ているのか?」


黙って三人の黄色い声に微笑みを浮かべていた楓が口を開いた。


「あっ勿論!材料だけ向こうの世界から持って来たんだ!」

「なになに〜?」

「あんことお饅頭の生地、そして苺です!」

「あっ、苺大福!」

「チョコはこの時代の人になじみがなさすぎるかなって思いまして」


かごめがリュックから取り出して並べていく。


「見た事のない実だね」

「あんこもこんなに…贅沢なことじゃのぅ」


珊瑚と楓は目を丸く見開いていた。

この時代では手に入りにくいのだろうか。


----ていうか、苺ってこの時代にあったっけ…


桜は苦笑する。


「全部家にあったので平気だよ。さ、みんなで作りましょ!」


そんな事は意に介さないかごめの一声で、一同は苺大福を作り始めた。




-------りんちゃん達は喜びそうだなぁ。


あんこを包みながら、いつも一緒にいる小さい一人と一匹を思い出し、桜はくすっと笑う。



------------殺生丸さまも、美味しいって言ってくれるかな…


あんこを包む手が止まる。



--------甘いもの、嫌いだったらどうしよう…




「桜ちゃん?」

「あ、はい!」

「どうしたの?」

「ななな、なんでもないよっ?」

「そう?少し顔色悪かったよ?」

「先輩!殺生丸の事ですね♡」

「恋の病、か…」

「かごめちゃんっ楓ばあちゃんっ」


赤い頬を膨らませ、手を再び動かし始める。


「別に、殺生丸さまとはそんなんじゃないもんっ
ただ、甘いもの嫌いじゃないかなぁって思っただけで」

「十分意識してんじゃん」

「ち、違うよぉー!」

「このあんこ、甘さ控えめだから大丈夫じゃないですか?
一応、味整えるためのものは一通り持って来ましたけど」

「あ、本当だ…これなら大丈夫かな」

「法師さま…もっと甘い方がいいかも………ってちょっと!違うからね!!」

「「珊瑚ちゃんかわいい〜〜」」



こんな感じで時は流れ、日が傾いて来た頃桜は楓の家を発ったのだった。









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