時代
□燃ゆる想い
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永禄十一年 兄である織田信長の命により
其の妹である市は
浅井長政への輿入れが決まった。
所謂(いわゆる)政略結婚ではあったが
幼い頃に何度か顔を合わせた事のある
浅井長政への輿入れは 市にとって
満更なものでは無かった。
長政は普段から無口であり又
余り感情を表に表すことも少なかったが
時折見せる優しげな表情に
気が付けば市は心奪われていた。
―長政様は自分の事を
どう思っているのだろうか―
元は兄の仕組んだ政略結婚。
もしかしたら長政様は自分の事など
好いくれていないのでは無いか。
市の募る想いは
何時しか不安へと代わって行った。