夜鷹のご奉仕

□四夜
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翌朝、出かけの前に月読様から居間に呼ばれました。
「夜鷹。昨日のことなんだけど、僕は君と友達になりたいんだ。」
「友達?………可能なんですか?」
友達とは、あまりにも僕には縁のない話で、頭が真っ白になってしまいました。
「君と僕の気持ち次第だよ。」
「自分は月読様の神使ですが、友達にもなれるのですか?」
月読様は難しいお顔をされて、丁寧に答えてくれます。
「なれる。だけど、これは外の世界では通用しない。皆頭がカチコチだからね。だから、僕達の間でだけこの家の敷地内だけで、友達になろう。オロチにも内緒だからね。」
「はい!」
嬉しくて、大きな声で返事をしてしまいました。
「ところで月読様。月読様のいらっしゃらない、間は友達は何をしていれば良いのでしょうか?」
「え…あ、そうだね…じゃあ、こういうのはどう?日が昇ってから沈むまでが、君が僕の神使であり、部下でいる時間。日が沈んだら君は僕の友達。」
「分かりました。」
「よしよし。」
月読様も嬉しそうに僕の頭を優しく撫でてくれます。

「夜鷹。何か良い事あった?」
オロチ様は鋭いお方です。
「…昨日、久しぶりの外出だったもので…」
嘘ではありません。
「ふーん、夜鷹ももう少し自由にさせてもらいなよ。こんな狭いお屋敷に閉じ込められて、よくニコニコしてられるね。」
縁側に伸びたオロチ様の白くて長い足が、ユラユラと揺れています。
「僕は今がとても幸せです。このお屋敷も狭くなんて全然ありません。」
オロチ様はまだ何か言いたそうでしたが、諦めたご様子で話を変えられました。
「夜鷹は、お小遣いもらってるの?」
「お小遣い?」
「ほら、月読様と出かけたときとかに、月読様がご飯と交換してる紙切れ。見たことあるだろ?」
ああ、はい。分かりました。
「まだもらっていませんが、もらうもの何ですか?」
「うーん、俺はもらってる。というか、あの屋敷の財布はほぼ俺が握ってる。」
すごいです。さすが、オロチ様です。出来る神使は、本当に何でも出来ます。
感動して、オロチ様を眺めていると、オロチ様が何かを思いついたご様子で僕に笑いかけます。
「夜鷹は自由なんだよな。じゃあ、今晩、俺と出かけても構わないはずだよな。」
「…え、そんな急に誘われても…」
「まあ、俺も一応神使だ。主の許可なく勝手に外出がまずいことくらいは分かるさ。俺がこれから月読様に許可をもらってくるから、許可がおりたら、一緒に出かけるか?」
「…はい。」
はいとしか言えません。

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