夜鷹の恩返し

□寝待月
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スサノオ様から戴いた剣は、月読様が保管してくださるくとになった。月読様から首飾りをもらってから、棚からの落下物も心持ち少なくなった様に感じる。

月読様のところでお世話になって、最近気がついたことがある。月読様のお部屋にはあまり客人がいらっしゃらないこと、月読様は部屋が外出されないことだ。

ここに仕えて数日経つが、ここへお訪ねになった客人は全て月読様の御兄弟のみだった。

「気になるのかい?」
食事中も何気なく考えていたようで、月読様に伝わってしまったようだった。

申し訳ありません。出しゃばった考えでございました。もう考えません。

「別にいいよ。気になるだろうさ。」
そう言って月読様は、自分の胸元に光る石を見つめられて、語られた。

「昔、スサノオは姉さんにたくさん迷惑をかけたんだ。姉さんは疑り深い性格になってね。僕のことも、疑うようになって、僕をこの屋敷に閉じ込めたんだ。」

そんな、兄弟なのに…

「兄弟だから怖かったんだろうね。父さんが引退して、この世で自分とほぼ同等の力を持つのは兄弟である僕とスサノオだけ。スサノオは何とか追い出せても、僕はまだいたからね。」

とんでもないことを聞いてしまった。自分のようなものが聞いて良かったのだろうか?

「何言っているのさ。君は僕の部下だろう?君以外に誰がこの話を聞くっていうの。」

昨日から不思議に思っていた。月読様はまるで自分しか月読様の配下が居られないような口振りで、自分を配下だと仰られる。この屋敷に居らっしゃる方々も月読様の配下のものではないのだろうか?
考えてから、しまったと気がつく。全て月読様に筒抜けであることをいつも忘れる。

月読様は声をあげて破顔なされた。
「君はなかなかに鋭い子だね。この屋敷に務める者は皆姉さんの配下さ。僕が屋敷から抜け出すことのないように見張っているんだよ。」

絶句する。これほどまでに、同じ血を分けた兄弟を監視する必要があるのだろうか?やはり神々のお考えは下賤な鳥の範疇を軽く凌駕してしまうみたいだ。

「それでも君を僕は見つけた。そのことは不思議じゃないのかい?」

驚いて、思わず月読様を見上げてしまう。月読様は面白そうに自分を見つめて、微笑まれた。
「流石にここまでは君でも教えられない。君がもし次の満月の夜まで僕の配下としてこの部屋にいたら考えてやらなくもないよ。」

まるで、次の満月の夜までに自分はいないかもしれないような口振りで、話される月読様の笑みに始めて背筋がゾッとした。

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