素直じゃないよね?

□あどみっしょん
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しばらく無言で歩く。神は何も話さないから、俺から話しかける。

「神は…」

声がかすれる。ずっと寝ていたせいか?とにかく、それ以上声が出ない。ゆっくりと、神を見上げると不思議そうにこちらを見ている。早まる鼓動を無視して、咳払いを2回

「神は何でこの学校に来たんだ?」

出てきた言葉は、考えていたのとは全然違った。

「君はどうなんだい?」

また、上から…俺は神の口調はほっといて、答える。

「俺は…親の希望だよ…」

ふうん、と神はつまらなそうに返す。そして、しばらく沈黙。小型のリゾートホテルのような寮が見えてきた頃、神が言葉をつっかえさせながら聞いてきた。

「ね…あのさ、き………鎌谷君は、寂しい?」

一瞬、何を聞かれているのか分からなくなった。追い討ちをかけるように、神は今度はいつもの口調で聞いてきた。

「君、うなされてたよ。寂しいって…君は寂しいの?どうして?」

神は興味津々といった様子で、最後にどうして?と、加えてきた。なんてところを俺は見せてしまったんだ。恥ずかしさから顔に熱が集まるのが分かった。

「ほら!!俺、ママと離れて暮らすの寂しいな〜!みたいな?」

精一杯茶化してみた。神の方を向いて答えることは出来ない。顔の筋肉が、硬直している。そんな俺を、神の少し怒った声が追いつめる。

「茶化さないで、教えてよ!僕は君が、寂しいってうなされてたから、授業休んで、ずっと君の傍にいたんだから。」

知るか!そんなこと言われたからと言って、何で今まで対立してきたお前に弱音を吐く必要があるんだよ!寝言なんか真に受けた、お前が悪いだろ!だけど、案外全然関係ないからこそ言えることかもな。言ってみようかな。「話せば楽になるよ」というどこかのポスターの標語が頭をよぎる。話す、話す、話す、考えただけで、ひざがわらい、目が回る。指先や顔から血の気が引く。エントランスの自動ドアを開けるためのカードキーは、カバンの中だった。神が俺の隣に立つ。
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