素直じゃないよね?

□ふぁーすとこんたくと
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鷲宮の入学式に俺はいた。無事、合格したのだった。鷲宮は上の中位の偏差値で、俺にしてはかなり頑張った方だ。落ちたら、地元の不良校に強制入学というペナルティーがなければ、今の俺はここにいなかっただろう。父さんが浮気していたのはショックだが、今は自分がこの生活に早く慣れることに専念する。
ところで、この鷲宮は男子校である。若干都心部から外れた、郊外の街に赤レンガの綺麗で荘厳な雰囲気の校舎が立ち並ぶ。普通の学校より少し大きいが、生徒の人数は少なく、1学年に4クラスしかない。また、1クラス20人弱のため、本当に無駄に広い学校となっていた。
そのため、施設費が他の私立校と比べて、かなり高い。また、少人数授業と全寮制を行っているため、有名大学進学率は毎年1位だった。
また、外部に対するセキュリティー設備が異常に高い。ただし、内部に対しては甘く、寮や学校の出入り口付近の警備は名の知れた大会社だったが、各部屋の管理はその孫会社で、そのこともパンフレットの隅に小さく書いてあるだけだった。しかし、デカデカと書かれた大会社の名前に親は安心するのか、訳あり有名人達の訳あり御令息達が自然に集まったようだった。
体育館に入って早々に俺は穴にのめり込みたくなった。
制服はないので、式ではスーツを着て出席するのだが、俺のスーツは上下合わせて、一万円、奴らのスーツは上下合わせて、うん十万。おまけに、訳あり御子息達の顔だちは皆一様に大変よろしく………
もう、お分かり頂けただろうか?つまり、俺はこの場所で浮いていた。
入学式は厳かに行われ、生徒会長も外見だけでなく、大変立派な挨拶をしてくれた。とにかく、俺はこの一時間と少しの間に美形に対する視覚的抵抗がついた。
早速成長だ。
どうだ、雅史、俺はお前の思うつぼだぞ。ワッハハハ!…虚しい。
入学式が終わり、体育館から出ると、バラバラに教室へ向かった。俺のクラスはAクラス。
これは、学力で決まるものでなく、ランダムなものだったが、Aというのは嬉しいものだ♪
さて、教室に着くと担任はまだ来てないようで、皆それぞれに交流を深めているようだった。体育館では明らかに浮いていたが、クラスでももちろん浮いていた。しかし、男子校故か皆あまり気にしてる様子がないのを見ると、外見はあまり気にしないようだ。幾分、気分も良くなり、早速自分の席に座ると、後ろの席の奴に話しかけた。
そいつは本を読んでいた。こう言うと、普通みたいだが、そんなんじゃなかった。
そいつの赤褐色の髪が、暗い灰色をした瞳の上にかかっていて、どことなく気だるい感じ。また、そいつの全身から漂う不思議なフェロモンのせいか、だらしない印象を受けない。

「…何?」

不機嫌そうな低い声で、俺は見とれていたことに気がついた。少しどもりながら、答える。

「お、俺、鎌谷清輝!これから、よろしくな!」

そいつは、不信そうにこちらをちらりと見て、また視線を下に戻す。

「そのだらしない顔、前に戻して。不愉快。」

奴の凛とした声は教室に響いた。教室は水をうったように静まり返っていた。

「?」

初対面の奴にこんなこと言われたのは初めてで、俺はぽかんとするしかなかった。
すると、奴はさらに言い募って来て、

「だ、か、ら、君と関わりたくないの!分かる?」

ガキか!内心毒づきながら言った。

「分かった。お前とは関わらないよ。この根暗!」

最後のは口が滑った。別段奴も何か言わなかったし、これでおあいこだ。
しかし、この雰囲気で俺に友達は出来るのだろうか?
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