短編2

□森月宮
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私は今、世に言うイケてるメンズ、略してイケメンに言い寄られている。しかも複数だ。
普通なら照れるなり何なり、それらしい態度を示すだろう。


「だからと言って貴方達は別です」
「なんで!」
「なぜだ!?」
「…はあ?」


ガーン、と後ろに擬態語が出てきそうな勢いでショックを受けているイケメン1号、海常の森山さん。
その横でショックのあまり数冊のノートを落とすイケメン2号、誠凛の伊月くん。
そしてせっかくの可愛らしいベビーフェイスに青筋を立てるイケメン3号、秀徳の宮地さん。
そしてその3人に現在言い寄られているのが私。


「急に呼ばれたと思いきや、何なんですか」
「こういう機会ってなかなかないからさ、きっと運命の女神が「女神の目が見え「てめえらどっか行けよ轢くぞこら」
「ほんと何なんですか」


私はよく高校バスケの試合を観に来る。最初は友達に付き合って来てたけど、近頃じゃ自分から誘っているくらい好きなのだ。
そして今日は誠凛、海常、秀徳という注目が集まる三校が合同練習をするというので、例外なく見に来ただけ。
その帰路につこうとしたところを―――このありさまだ。


「…あの、もう帰ってもいいでしょうか?皆さんも練習終わったばっかりで疲れてると思いますし」
「いや全然疲れてないよ。むしろ君に癒されたいというか」
「……じゃあチームメイトの人達が待っていたりしますし」
「先に帰ったから気にしなくていいよ」
「………ならば帰ることくらいしか残されてませんよね」
「だからお前に話があるって言ってんだろ人の話聞け」
「いやです聞きたくないです顔に釣られたらいいことないって知ってるんですから騙されないんですから!」


そう吐き捨てるとだっと全速力で走り出す。つもりだった。正確には全力を出す前に三人に両腕を掴まれた。
さすがに男三人に捕まれてはびくともしない。


「逃げ出さなくてもいいだろーよ」
「大丈夫、悪いようにはしないさ。これも二人を結びつけた運命。だからちょっとそこでお茶でもしない?」
「森山さん、そういう発言が余計警戒させてると思われます」


口々に言ってはずいずいと引き寄せられる。なんて鍛え方しているんだ。それをバスケに生かせ。
私の抵抗も空しく、壁の方まで追いやられると見事に三人に囲まれた。逃げられない。


「で?結局あんたは誰を選ぶ訳?俺だよな?」
「俺だと嬉しいんだけど」
「もちろん俺に決まってるよね?」


イケメン三人に、囲まれ、壁ドンで、言い寄られる。
何この完璧とも言えるようなシチュエーション。
そんな状況に顔を真っ赤にするのは私も例外ではなかった。
しかし、それは恥ずかしさでもなんでもなく、怒りから来ているものだとは誰が気付くものか。


「私……イケメン苦手なんです」
「「「……は?」」」
「無駄に綺麗な顔して何なんですか喧嘩売ってるんですか女の敵!顔近付けんな!!イケメンなんてイケメン同士で掛け合わされてればいいんだ!!お幸せに!!!」


言いたいことだけ言って呆然とするイケメンの壁を掻い潜り、脱出成功。
ほとんどは私の嗜好を暴露しただけなのだが、この状況を脱出できたのならいい。


「えーっと…」
「これは…その………」
「………そっち系…?」


互いの顔を見合わせては気まずそうに目を逸らすイケメン三人を後ろに、私は颯爽とその場を後にした。





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