わたしとキセキとミラクルデイズ

□キセキとポッキーの日
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「で、誰からするんですか」
「もちろん僕だろう」
「赤ちんがほのちんのファースト?」
「それは駄目っスよ!」
「見過ごせないのだよ」
「いくら赤司でも許せねえ」


先程までの団結力は何処へ行ったのだろう。
皆箱を片手に順番を争い始めた。なんて間抜けな戦いなんだ。


「黄瀬君はなんで極細なんですか」
「いやあ…俺、お菓子とか普段食べないんスわ。体型キープしたいし」
「聞きました?聞きましたか赤司くん?」
「ああ、聞いた。鼻に極細詰め込んでやる」
「ちょ、す、ストップ!!やめ、うわあああああ!!」


黒子くんと赤司くんがポッキー両手に黄瀬に襲い掛かった。
よし、これで3人潰れたな。


「あー、ミドチンのおいしそー」
「なんか…すげえな…」
「当たり前なのだよ。人事を尽くしているからな」


そう得意げに眼鏡を上げる緑間くんの手には、えらく装飾されたポッキーが。


『緑間くん、それ何?』
「知らないのか?教えてやってもいいのだよ」
『なぜ上から目線』
「これは、『デコレーションポッキー』なのだよ」
「………は?でこ、なんて?」
『緑間くん、乙女すぎて笑えない』
「何故なのだよ?」


首を傾げるあたり、彼は天然と見た。
しかもポッキーに書かれている字に注目していただきたい。「おは朝」て。デコポッキーに「おは朝」て。


『どんだけおは朝ラブなの』
「人事を尽くした結果だ。それにしても紫原…それは何なのだよ」
「えー、ポッキー」
「んなゴツイもんが?」
「そだよー」


幸せそうにポッキーを取り出す。


『待って。私の知ってるポッキーじゃない』
「何なのだよそれは!デカいのだよ!もはやビスケットとチョコの複合物なのだよ!」
「知らないのー?ポッキーのビッグサイズだしー」
「すげーな…緑間より人事尽くしてるんじゃね?」
「なのだよー」
「そ、そんなはずはないのだよ!」
「はっ、全員同じもんばっかでつまんねーな。俺を見習え」
『青峰は何買ってきたの?』
「プ●ッツ」
『商品違う』
「この邪道め!ポッキーの日なのだよ!」
「同じ長細いだろーが。長細かったら何でもいいんだよ」


わあわあと喚く緑間くんと「この前発売したやつだーいいなー」と物欲しそうな目で見つめる紫原くんを横目に威張る青峰。


『あー…絶対赤司くんに怒られるね』
「バレなきゃ問題ねえよ」
「赤ちーん!峰ちんがプリ●ツ持ってきたー」
「てめ、紫原!!」
「大輝、そこを動くな。お前も詰めてやる」
「こっちくんな!!」


青峰が走り出す。と、すぐさま両手にポッキーを持った赤司くん、続いて黒子くんが視界を横切った。
まったく、騒がしい奴らめ。などと考えていると、緑間くんの悲鳴が聞こえた。
 

「紫原!何をしてるのだよ!」
「えー…おいしそうだったから、つい」
「つい、じゃないのだよ!」


喚く緑間くんを気にもかけずデコポッキーを頬張る紫原くん。さては最初から狙ってたな。
視線をずらすと、真っ青な顔をして倒れている黄瀬を見つけた。お世辞でもモデルとは言えない。これを見たら全国のファンは病院沙汰になるだろうから、詳しくは言わないが、酷い光景だ。


「ほのちんポッキーいるー?」
『あ、ありがとう』


差し出されたごついポッキーを受け取り、一かじり。


『今日も、平和だね』


体育館に響き渡る青峰の悲鳴を余所に、私はもう一口、と口を開いた。





(で、当初の目的はなんでしたっけ)
(涼太と大輝にポッキー詰めるんじゃなかったか?)
((ちがう))


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