わたしとキセキとミラクルデイズ

□キセキとお泊り会D
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紫原が黄瀬に掴みかかろうとした瞬間、がちゃりという音が部屋に響いた。


『ちょっと、私の家で暴れないでくれる?』
「ほのっち!ちょうどいいところ、に………」


徐々に小さくなる声。
ぽかんと呆気にとられた表情をする黄瀬を目の前に、穂乃香は首を傾げた。


『なに、口開きっぱなしだよ』
「ほのっち……」
『ん?』
「珍しくないとか言ってごめん」
『は?』
「まじごめん」
『いやいや、そんな真面目な表情で謝られても意味分かんないし。ねえ?』


怪訝そうな表情で同意を求める穂乃香。
しかし、個性豊かな彼らが彼女の求める言動をするはずがなかった。


「ま、まあ……悪くないのだよ」
『は?』
「確かに、青峰君の意見には否定できませんね」
『え、ちょ』
「いや…俺もここまでとは…」


口々に感想を言い始める彼らに、穂乃香は眉間のしわを寄せた。
一体何の話をしているのかと問いだそうと口を開いた瞬間、「ひっ」という気の抜けた声が出る。


「ほのちんいい匂いー」
『ちょ、紫原くんくすぐったい!』
「敦、離れろ」
「……はーい」


渋々といった様子で穂乃香から離れても、紫原の視線は彼女から外れない。
彼の髪から零れ落ちた雫を拭き取ると、穂乃香は不機嫌そうに「それで、何?」と6人を睨んだ。


『なに、人の顔見て口々に意味分かんない事言ってんの。私に言えない事でもあるの?』
「そ、そんな事ある訳ないっスよ!」
『あやしい!隠し事してるんでしょ!?』
「そんな事あるはずないだろ。穂乃香は僕達の事を信用していないのかい?」
『そ、そんな事ないよ…けど、』
「なら信じろ」


おお、という感嘆の声が漏れる。
例え自分に否があったとしてもその状況を翻し、且つ正当化させる。さすが赤司。彼にしかできない業だ。
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