わたしとキセキとミラクルデイズ

□キセキとお泊り会C
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―――――−‐


始まったのはいいけれども――


『肉くらい普通に切れ!片方の手で押さえて!』
「無理っスよ!気持ち悪くて触りたくないっス!!」
『じゃがいもに包丁突き立てるな』
「人事を尽くした結果なのだよ」
『尽くせてねえよ。特にこの芽が取り除けてないところとか』
「ほのちん、にんじん切るのめんどい」
『だからと言って折るな』


前途多難とはよく言ったものだ。
世の男子とはこんなに料理ができないものなのか?いいや違う。こいつらが不器用すぎるだけだ。
包丁持ったままぎゃあぎゃあ喚く奴、突き刺さった包丁を前にどや顔を決める奴、挙句の果てには包丁すら使ってない奴までいるなんて。
まったく、目が離せない。が、問題なのはこいつらだけじゃない。


「青峰くん、お米流れてますよ」
「あー………気のせいだろ」
「気のせいじゃないです。僕がします」
「ちょ、テツてめえ!押すなって!」
「退いてください」
「誰が退くかって!」


瞬間、じゃらじゃらじゃらと独特な音がシンクから聞こえてきた。


『………お米流し「てないです」流した「わけねえだろ」


こっちの光と影コンビはバスケ以外の時は合わないという言葉通り、全く息が合っていない。というより、合わせる気がないと言った方が正しいのか。
言い訳だけ立派に息ぴったりなのは認めてやろう。許さないけど。
はあ、と深く溜息をつく。
こいつらはだめだめだ。コートの中では頼りになるけど、食材の前じゃ所詮ただの料理下手な男子。
まったく、と呟きながら我が主将様を思い浮かべる。
まあ、あの人は大丈夫だろう。なんったって、赤司くんだからね。
そう思いながら、彼の方へ視線を向けた。


『待って。包丁片手に何にじり寄ってるの』
「玉ねぎ風情が僕に抵抗するなんて良い度胸だね」
『やめて赤司くん野菜相手に語らないで』
「いいだろう。君がその気なら僕だって手加減はしてやらない。精々無様に刻み込まれろ」
『赤司くん目見開きながら涙目になるのやめて』


所詮同族か。
こうなったら駄目元で、こいつにやらせてみよう。


『黄瀬、イケメンがやってる某料理番組見て作って』
「無理っスよ!そんなの見たくないっス!モデルのプライドとして!」
『いいから黙って作って』
「りょ、りょりょっりょーかい!」


まあ、出来は置いといて、とりあえず食べれるものが出来たらそれでいいや―――
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