わたしとキセキとミラクルデイズ

□キセキとお泊り会B
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全国の子持ちのお母様方を、これほどまで尊敬したことはないだろう。
目を離している隙にどこかへ行く、カゴの中へいらない物を次々と入れていく、店員さんに怒られる――――
そんなに大変なものなのかと思っていたが、侮っていた数分前までの自分が腹立たしい。
まさか、今その思いを痛感することになるなんて――――




『黒子くんー!どこ行ったのー!』
「僕はここです」
『ぎゃあ!いるんだったら言ってよ!』
「さっきから後ろにいました」
『そ、そう……ごめん……って、紫原くん!カゴ重いんだけど!』
「なんのことー?俺なーんも知んねーし」
『とぼけるな!今両手いっぱいのお菓子入れたの見えたからな!』
「こんぐらい普通だし。ってゆーかほのちん、あれいーの?」
『え、なにが……』


紫原くんが指差す方向には、何やら人集りが。
よくよく目を凝らしてみると、スーパーの制服を着ている男の人と見慣れた赤髪が視界に入った。


「あの、困るんですけど」
「困る?それはこっちの台詞だよ。なんで絹がないんだ」
「当店には木綿しか置いてないのです」
「ふざけるな。湯豆腐には絹だろ。持って来い。今すぐにだ」
「だから、うちの店では取り扱ってないんです」
「絹すら置いてないなんて大手スーパーの名が泣くぞ」
「店長呼びますよ」
「望むところだ」


『……………』
「止めなくていーの?」
『……ほっといても大丈夫でしょ。紫原くん、あんまりあっち見ないようにしようね』
「うんー」


できれば他人の振りをいておきたいから、という言葉を飲み込み、代わりに「緑間くんは?」と尋ねた。


「緑間君は玉ねぎを選んでます」
『え、まだ選んでるの?』
「はい。なんか、『北海道産にするべきか、それとも淡路島産にするか……迷うのだよ』と言ってました」
「ああ……そう…」


まあ、几帳面すぎるのが緑間くんらしいというかなんというか……
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