Parallel Lines

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古橋くんと別れて小一時間が経過した。
建物の中にいてても地面に水滴が当たる音が聴こえてくるほど、雨はますます勢いを増していた。
時間はとっくに定時を過ぎていて、ちらほらと帰路につく人を見送りながら今吉先輩を待つ。
そんな中、ふと、仲良さ気に話しながら歩いて行く一組の男女が目に入った。今からどこかへ行くのだろうか、携帯を見せ合いながら何やら相談している。
そういえば、今吉先輩は誰かと付き合おうとは思わないのだろうか。
そろそろ結婚を考えてもいいはずの年齢。それなのに、そのような話は一切耳にしたことがない。
もしかして、すでにいるのかもしれない。私に気を遣って口にしないようにしているのかもしれない。もしいるのならば、家に居候するのはまずいのでは―――


「愛、」


突然の声に驚き、肩をビクつかせる。後ろを振り向くと、今吉先輩がいた。


「お仕事、お疲れ様です。今日、傘持って行ってなかったので…」
「お迎えに来てくれたん?わざわざおおきに」


「おー、すごい雨や」なんて外を見ながら驚く今吉先輩に傘を差しだす。
よかった、余計なお世話だったらどうしようかと思っていたけど…。


「でも連絡は入れなあかんで。せっかく携帯持ってんねんし」
「あ…すみません、忘れてました」
「古橋くんが愛と会ったって言うてくれたから分かったものの…あ、今日古橋くんと話とってん」
「らしいですね。コンタクト取るやらなんやら言ってました」
「そうそう。…でも自分、あかんで?古橋くんがなんかの拍子で花宮に言うたらもう終わりなんやから」
「その節は反省してます……ごめんなさい」
「まあ謝ってもどうしようもないことやし、ええねんけどな」


思ったより今吉先輩は怒っていなかった。
「まあバレた時は直接対決や」なんて呑気に言っているほどである。そうなったらなったで困るのだけれど。
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