Parallel Lines

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迂闊だった。なんて自分は馬鹿なのだろう。
真本人の存在はこれでもかというくらい注意を払っていた。見つかったところで何もないとは思うが。でも会いたくはない。
しかし、真の元チームメイトであり、現同僚である彼に会う事を、全くと言っていいほど考えていなかった。


「………愛?久しぶりだな。結婚式以来だ」


相変わらず光が灯らない目は、私を焦らせるのには十分だった。
引きつりそうになる表情を何とか緩ませ、にこりと微笑んでみる。


「久しぶりだね、古橋くん。雨なのに外でお仕事?」
「ああ。今日は提携企業とコンタクトを取るためだ」
「へえ、そうなんだ…大変そう」
「まあ、人付き合いが苦手な俺にやらせることではないとは思うが…」


「それでも仕事はやらなければな」と自身に言い聞かせるように言う古橋くん。やっぱり高校生の時とは違った大人っぽさを醸し出している。
そういえば原ちゃんや山崎くん、瀬戸くんはどうしているのだろう。皆結婚式以来会っていない。真に家に連れてきてって言っても連れてきてくれなかったから―――


「そういえば最近花宮の機嫌が悪いんだが…何か知らないか?」
「…え、」
「前までなら部下のミスに一言言うくらいだったのに、最近やたらと厳しくなってな…何か心当たりないか?」


部下の人、ごめんなさい。それ私のせいです。
だなんて言えるはずもなく、首を傾げて「さあ…」と言葉を濁しておいた。
でも、何が不満なのか。もう私の事なんて忘れればいいのに。喧嘩したら「出ていけ」やら何やら言って散々泣かせてきた割には、えらく執念深い。


「…何かあったのか?」
「…え?あ、ううん、なんでもない。あ、古橋くん、真のことなんだけどね。そっとしといてあげて?」
「なぜだ?」
「真、自分以外の人に指摘されたら余計頭にくるタイプだし…私もよく怒られてたし」
「なるほど、それは確かに言えるな」
「だから、そっとしていてあげて」


私のせいで真の仕事に支障が出たら、それこそ罪悪感でいっぱいになる。せめてもの償い、とばかりに古橋くんに手を合わせる。
それを見て古橋くんは「分かった」と一言言うと、それ以上何も言わなかった。
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