Parallel Lines

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夢を見てる。
高校生の頃の光景だ。
霧崎第一男子バスケットボール部のマネージャーとして励んでいたあの頃。
原ちゃんが山崎くんをからかって、山崎くんが原ちゃんを追いかけて、それを見て古橋くんが呆れていて、瀬戸くんは相変わらず寝てて。
それをちょっと離れた所から、真はしょうがねえ奴等、って溜息交じりで呟いて、だねーって頷く私。
それがいつもの光景で、ずっと続くと思ってた。
でも、卒業して、大学に入って、また卒業して、社会人になって、会社で働いて、それで、真と結婚して―――
――――――そういや、なんで真と結婚したんだっけ?
きっかけとか、馴れ初めとか、あれ、なんだっけ、思い出せない、なんで、ねえ、なんで、




「――――――真、」


そう呟く自分の声に、はっと意識が覚醒する。
ああ、寝ていたのか。ふと時計を見ると、あれから3時間も経っていた。寝すぎた。外はすでに暗くなり始めている。
しかし、しばらくして私は気が付いた。違う。日が傾いたから暗くなってるんじゃない。日が雲で隠れている。


「…雨だ」


急いでベランダに干してある洗濯物を取り込む。少し湿ってしまったが、まだセーフだ。よかった。
その瞬間、タイミングを見計らったかのように雨が一気に激しさを増す。そういや、すごく天気が悪くなるって言ってたな。
…………あれ、今吉先輩、傘持って行ってなかったっけ………?
……うん、持っていなかった。普通に、「おー、晴れとるやん」なんて言いながら出ていってた。


「そろそろ終わる頃、だよね…」


万が一の為に、と冷蔵庫に張り付けられたメモを読む。
会社の住所、電話番号、定時。定時は5時で、現在4時半。迎えに行った方がいいのかな…
先輩曰く、「ワシ、いつも定時で帰るから」らしい。本当に大丈夫なのかな、あの人。まあ、それなりの地位にいそうなんだけど…
そうこう言っている間に、ますます雨は酷くなる。悩んでいる暇はない。迎えに行こう。
少し服を整えて、メイクもせずに傘を二つ持ち、これまた万が一の為にと渡された合鍵を持って、ざあざあと鳴り響く外へと踏み出した。
そういえば、一体なんの夢を見ていたんだろう?
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