Parallel Lines

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暇だ。
今日は平日。今吉先輩は会社に出勤している。
頼まれていた部屋の掃除や、何となく手を付けた洗濯など一通りの家事を終えると、小さめのソファーに腰を掛けた。
テレビをつけ、昼のニュースにチャンネルを変える。夜から天気が崩れるらしい。忘れないように中に取り込んでおかなくては。
ふと、雨マークの隣に映る日付に溜息が漏れた。


「家を出てから3週間、ねえ……」


思ったより早い時間の流れに、また溜息が出る。もう真は出張から帰っているのだろう。あの家に、真は―――
思えば、酷い事をしたのかもしれない。向こうからすれば、突然妻が離婚届を置いて家の中から姿をくらましているのだ。驚くのも無理はないだろう。
そういえば、喧嘩をする度に「出ていけ」と怒鳴られたな。もう喧嘩をすることもなくなったけど。まだあの頃の方が愛着があったということだろうか。
今頃どうしているのだろう。ご飯はちゃんと食べているかな。いや、それよりも掃除はちゃんとしているだろうか。ああ見えて結構整理整頓が苦手だから――


「……もう関係ない、か」


そうだ。私は離婚届を、加えて指輪まで置いて出てきたんだ。もう縁はとっくに切れている。
携帯も捨てた上に行方をくらましたこともあって何の連絡も来ないが、向こうもその気のはずだ。いや、そうに決まっている。
そう考えないと、また会いたくなってしまう。それじゃ駄目だ。
決意の念が緩んでしまった自身への戒めのつもりで頬を抓る。
ああもう、ほんと駄目だなあ。真と離れてから分かったことがある。自分は、自分が思っていたよりも弱かった。一人だと、何もかも自信がなくなるし、何をすればいいか分からなくなってしまう。
だから、そういう時は真を頼ってきた。学生の頃から、ずっと。真からすればいい迷惑だっただろう。やっぱり負担だったんだ。そりゃ愛想も尽きる訳だ。仕方がない。
そう反省しながら、ソファーに横たわる。途端に襲い掛かってくる眠気。
まだお昼だけど…ちょっとだけ、30分ほど、寝よう。
そう思い、そっと目を閉じた。
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