Parallel Lines

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目の前の皿が空になっても、私達の会話が途切れることはなかった。
中学の頃の思い出話を中心に、高校、大学、社会に出てからと様々な話題に飛んでは戻って、飛んでは戻って。
最終的には、やはり共通の話題がある中学時代に落ち着いた。


「マネージャーってやっぱ大変なん?ワシ分からんねんけど…」
「大変ですよ!もう雑用ばっかりに追われて、テーピングの仕方とか、応急処置の仕方とか覚えるの、大変なんですから!」
「へー、そらお疲れさんやったなー」
「もっと感謝してください」
「はいはい、おおきにおおきに」
「誠意がこもってませんよ」


そう言うが、当時は大変だったものの楽しかった。
今吉先輩を中心としたプレーは見事と言うしかない程圧倒的で、実際好成績を収めていたくらいだ。そんな先輩は腹黒いところこそ痛手ではあったが、部員達からの信頼も厚く、私の憧れの人だった。


「もうバスケはしてないんですか?」
「堪忍してや…もう体動かんわ」
「年ですね」
「これでもまだ20代やしー」


そうですかーと生返事をし、アイスコーヒーを啜る。
そうだ。私も今吉先輩も、もうすっかり大人になってしまったのだ。当たり前の事だが、なんだか不思議な感覚がしてたまらない。
あの頃はまだ、大人になるだなんてずっと先のことだと思っていたのに、今ではすっかり大人になって、結婚までして――そして別れが来るだなんて、思いもしなかっただろう。
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