Parallel Lines

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「ほんま、自分ようやるなあ」


今吉先輩の部屋に住み始めて早5日が経った。
電気機器が揃えてある店から紙袋片手に出る私と今吉先輩。私の片手には真新しい携帯電話が握られており、その画面をぎこちない指でなぞる。
携帯電話を買い替えた、というより、前の物が使い物にならなくなったのだ。


「まさか、自分でケータイ折るとはなあ…」
「GPS機能がついていたので…よく迷子になるからって、真に」
「そんで、逆探知されんように折る……ワシには到底思い付かんわー」
「そ、そうですよね…後先考えずに衝動的にやっちゃいました…」


あの時は確か、家を出てしばらくしてだっただろうか。
ホームで携帯電話の事を思い出し、どうしようと焦っていた先での行動だったのだが……今から思い返してみても、よくやったものだと自分でも褒め称えたいくらいだ。


「ええねんええねん。そういう愛好きやでー」
「もう、そんなのだから先輩結婚できないんですよー」
「あ、言うたな。結構気にしてんのに」
「えー、ほんとですかー?」


軽い調子で繰り広げられる今吉先輩との会話は、本当に楽しい。
中学生の頃に戻ったかのようだ。
そんな事を考えていると、低い音が下から聞こえてきた。


「なんや、自分腹減ったんか?」
「す、すみません…」
「まあ、もう昼やしなあ……どっか適当に食べてこ」
「あ、はい!」
「あ、ワシええ店知ってんねん。そこにしてもええ?」
「はい!」
「ほんなら行こか」
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