Parallel Lines

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「うわー……やっちゃった」


少し大きめなキャリーバッグ片手に溜息をつく私の視線の先には、大粒の水滴たち。
家を飛び出た頃にはすっかり暗くなっていたため、雲行きが分からなかったのだが。


「天気予報くらい見とけばよかったなぁ…」


荷物の中には傘の1本も入っておらず、雨よけというにはあまりにも頼りないタオルが私の頭にかけられていた。
雨宿りとして近くにあったマンションの玄関口にいるものの、こんな所で夜を明かす訳にはいかない。いずれにせよ、この雨の中で寝床を探さなければ。そうしたら、次はどうすれば――


「ほんと、駄目だな…」


いくら性格的に少し抜けているとは言えど、もう立派な大人。これくらいの事、できていなければならないのに。
けれど、そのおかげもあって真と関係が深めることができたのだろう。
悪態をつきながらも、手を差し伸べてくれた。「バァカ」って言いながらも、呆れたように笑ってくれた。
けど、今は―――


「私から、離れたのに、ね」


何の飾り気もなくなった左手の薬指を見つめる。
つい数時間前の事だ。自ら誓いの印を外したのは。それにも関わらず、もう後悔し始めている。


「ほんと、弱いなあ」


視界が、歪み始める。
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