短編

□自殺願望者
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死にたいな


なんて考えたことは、よくある。

自分の存在意義が分からない、とか、どうせ自分なんかが生きていても、なんていう厨二くさいことは思ってない。
純粋に「生きることに疲れた」だけ。


いじめられるのに疲れた。
人の言う事を聞くのに疲れた。
生きるのに疲れた。

ただ、それだけ。


こうして屋上にいると、何となく飛び降りたくなるのは私だけだろうか。
なんでだろう。
意味もなく、どうしようもなく、そういう衝動に駆られる。


「なんでだろうなあ」


首を傾げてみても、よく分からない。

だからといって、フェンスに掴まっているこの手を離そうとか、そういうことは考えていない。
お弁当を食べてたらいきなりいじめっ子達が来て、私のスカートを無理矢理脱がし、フェンスの向こう側にやっただけ。
私はそれを取りに来ただけ。
それだけなのに。


「うわ、高………」


こうして、あと一歩踏み出したら死の世界へ直行できる、という場面にいたら――
死にたいな、なんて考えは瞬間にして吹っ飛ぶ。
かわりに頭の中を支配するのは、


「こわい」


この三文字のみ。
こわい。こわい。こわい。
早く安全なフェンスの内側へ戻らなければ。
そのためには、まず足元に落ちてるスカートを取らなきゃ――――

フェンスをしっかりと掴みながらしゃがむ。
視界にはカタカタと震える手と足が映った。
じんわりと汗が滲んでいるのは気のせいじゃない。
これさえ取れば、大丈夫なんだから。
これさえ取れば――――
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