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□強敵
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「イビ…。 うちね、栄吉に振られてしまった」
少し自嘲気味に、でも、心底悲しそうにカナはワシに相談を持ちかけてきた。
ミヤに、「ロードに集中したいのと、相手できんのが悪い」という理由でカナちゃんと別れるというのを聞いたのは、一昨日のことだったか、
事情を知る俺は、ミヤに悪いとは思いつつ、チャンスだとも思った。
本当に、嫌な奴じゃワシは。
「お前より大切なモンができてしもぅたから、別れてくれ…じゃって、 …ねぇイビ…」
カナの目から涙が溢れたとき、ワシは、もう駄目だと思った。この手で、この子を守りたいと思った。
カナちゃんを抱き締めようと腕を伸ばした時、
「栄吉なぁ、嘘が下手くそやなぁ…?」
「…カナちゃ、」
「ちゃんと言ってくれたらうち、我慢するのに。
困らせたりなんかせんのに… なんで、栄吉は、
うちと別れるっちゅー決断したんじゃろ??」
伸ばした腕は、空を掴んだ。
カナちゃんは、なんもかんもお見通しやったんや。
別れたのはロードと、自分のためじゃって。
「でも、うちより大切なもん、っていうのも、案外間違いではないかも…しれんね」
と、自嘲気味に呟くカナちゃんを見て、これはミヤには敵わんなぁ、と溜め息を吐いて、ワシの初恋も終わった。
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