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□最後に恋をしましょうか
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「良かったですねぇ円堂さん。無事に松風くん達が助け出してくれて」
「っベータ…?どうしてここに…」
「円堂さんに、会いたかったんですよぉ」

全てが終わって、再びいつもの日常がやってきた現代に(私からすれば過去だけど)私はやってきた。
今日は土曜日。ランニングしていた円堂さんをつかまえちゃった。

「…ベータ、とりあえず着替えないか?その格好は目立つ。」
「ええ?替えなんて持ってきてないですよぅ」

向こうには私服と呼ばれる服は支給されてなかった。ユニフォームと、せいぜい寝るときのスウェット程度。だって、寝るとき以外は練習ですもの。

「うーん…夏未の貸してやろうにもアイツに説明なんてしよう…」
「…? ナツミ?」
「ああ、俺の奥さんだよ」
「お、奥さん?」

円堂さんにも家庭があったんですねぇ、さも興味のないふりしてあいづちを打った。
本当は、心臓が早鐘を打って動悸がおさまらなかったくせに。

「円堂さん、私にお洋服買って下さい!」
「えぇ?」
「円堂さんの家ここから遠いでしょう?ほら、近くに駅もあるし、街まで出掛けませんか?」
「な、なんでそんなこと知ってるんだ?」
「円堂さんのことならなんでも知ってますよぉ」

腕をぐいぐい駅の方へ引っ張った。
円堂さんがいうならなんでも良かったけど、いくらなんでも奥さんの洋服を着る勇気は私には、ない。

ぱさっ

肩のとこが暖かくなったと思ったら、円堂さんのオレンジのジャージが私にかけられてた。
あ、円堂さん、半袖…

「いくらなんでもその格好で電車はダメだ。俺ので良かったら羽織っておけ」

汗くさいかもだけど…、
申し訳なさそうに続ける円堂さんに、また心臓が早鐘を打つ。
汗くさいだなんて、全然。全身で感じる円堂さんの匂いと暖かさでくらくらしてしまいそうだった。



「ベータ、どんなのがいいんだ?」
「ええっとぉ…うーん…?」

どんなのがいいといわれましても…。
着いたのは集合型ショッピングモール。服屋さんはもちろん、食べ物やさんや映画館も入っている大型デパート、らしい。
入店10分、すでに服に酔ってしまった。
こんなにお洋服って多いンですね…。種類なんか全然分からないし、ズボンとパンツの違いって何?ミュールとサンダルは何が違うの?

「ベータぁ…どれか言ってくれないと俺ほんとに全然分かんないぞ…」
「うう…私だって何が何やら…」

薄い素材の服を伸ばしたり縮めたりして行き先のない指先を誤魔化す。値札には、いち、ぜろ、ぜろ、ぜろ、ぜろ…。
い、いちまんえん?!
こんなヘロヘロの薄い素材の服がどうして一万円も?!?!


「何かお探しですか?」

1と0で頭がぐるぐるしてたとき、お店の人が話かけてくれた。

「この子に合うの、一式揃えてやって下さい」
「はい、かしこまりましたぁ」

店員さんは、私に向かってにっこり微笑んだ。

「えっと…お客様は細身で色白ですから、こちらの淡い色なんかオススメです。それで、こちらに合わせる、今流行りの花柄パンツなんでどうでしょう?」
「え、えっと、え…?」
「ベータ、着てみたら?」
「あ、はい…」

言われるがまま試着室へ。
来てみると、サイズはぴったりだった。さすがプロというかなんというか…。
トップスは淡い水色のシンプルなシャツ。ボストムは今流行り(らしい)の花柄パンツ。トップスの色と合わせ、寒色系の花が散りばめられている。
自分でいうのもなんですけど、似合ってる…!

「円堂さん、どぉですか?」
「おお、いいんじゃないか?じゃあそれ買うか!」
「あっ 待って…靴が…」
「ああそっか、すいません、服に合う靴とかありますかね?」

店員さんはマッハの勢いで棚から目ぼしい靴を取ってきてくれた。

「花柄パンツでしたら同系色のパンプスがまとまって見えて綺麗ですよ」
「じゃ、これで決まりだな。お会計お願いします」
「ありがとうございまーす」

もらった紙袋にユニフォームを入れて、店から出た。
初めての洋服は、なんだか恥ずかしいけど、とてもワクワクする。

「いいの決まって良かったな」
「はい!」
「じゃ、これからどうするの?」
「え、…あ、あれ!す、すたーばっくす行きたいです!」

これからどうするもなにも予定なんて経ててなかった私は激しく動揺した。帰るか、って言われたくなくて、思わず目に入ったコーヒー屋さんに入った。

「ベータ、何にする?俺はカプチーノ」
「えっと…モカフラペチーノ!」





「どうだ、うまいか?」
「はい!」

コーヒーができたと同時に席が空いたので、そこに腰を下ろして、コーヒーを味わった。

「フラペチーノってうまいのか?ちょっとくれよ」
「あっ…」

円堂さんは私のフラペチーノを傾けて、ストローに口つけた。
あ、間接キス…

「ん、うまいな!」
「………」
「ん?どうした?」
「………っ」
「ああ、悪い悪い、俺のも飲むか?」
「っ?!い、いいですいいです!」

思わず断ってしまった…もったいないことしたかも…。

すると円堂さんは立ち上がって、


「……コーヒーも飲んだし、そろそろ、帰るか」
「………あの、まだ…」

PLLLLLLLLLL…

私の言葉を遮ったのは携帯の着信音だった。

「お、夏未からだ。ベータ、外出よう」

私の腕を掴んで、小走りで出口へ向かう円堂さん。
「もしもし夏未?」そんな声が聞こえた。


分かってたのに。円堂さんは私のものには決してならないことを。

どんなに優しくても、
どんなに私に笑顔を向けてくれても、
円堂さんは私の向こうの"ナツミさん"を見てる。
円堂さんが見てるのは、"私"じゃない________。



「うん、ごめんごめん。もーすぐ帰るからさ。じゃあな」

ピッ

電話は切れたのだろうか。
もう、何も考えたくない。

「ベータ、帰ろうか」
「……はい」

これ以上、円堂さんに迷惑かけられない…。



稲妻町に戻ってきた私たちは、鉄塔のある広場へきた。未来へ戻らなくちゃいけない私は、なるべく一目につかない所で作業をしなくちゃいけなかった。

「…円堂さん、今日一日ありがとうございました。」
「おう、こっちも楽しかったぜ」

……最後の最後まで、期待させるんですね…


「……なぁベータ、今日…何か言いたいことあっただろ?」
「え…」
「分かるんだよお前が何考えてるかぐらい!言ってみろ?どんなことでも受け止めてやるから!」
「…………」

あぁもう、あなたって人は!
自ら溢した気持ちを、無理矢理すくいあげてこないでくださいよ。もう、本当……



「円堂さん!!」
「うおっ、と」

受け止める!そう言った彼は、飛び付いた私をしっかり抱き止めてくれた。

「大好きです!!」
「…うん、俺も」
「……もう、子ども扱いして…円堂さんなんかより私の方がもっと好きです!」
「俺だって負けねぇさ!なんたって夏未と同じくらい!」
「………もう、」


円堂さんには負けました。
敵いそうにないです。




「ベータ、またな!」
「…はい、また!」


でも、もうきっとこの時代のこの町にはこないだろう。それを円堂さんは知ってか知らずか、"またな"と言ってくれた。
きっと円堂さんにはお見通しだろうな、なにもかも。

だって、この私を惚れさせてくれた人ですもん!!








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ベータちゃん口調わかんない二人称とか合ってるか心配それでも好き好きベータちゃん!

設定とか色々違うかも
スタバ行ったことないしファッションセンスも皆無…参考になんかしちゃダメよ

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