Book
□☆Magician☆
1ページ/1ページ
「どうすればいいんだ私は…」
「………」
「もう打つ手がない」
「………………」
俺が仕事から帰って来たらすでにこうだった。風介はどーでもいいことほど絶望的な演技をする。すごく面倒くさいので放置している。
どうせあれだろ、抜け毛がひどいとかそういう類いの悩みだ。
あんだけがしがしやって、抜けねぇわけねぇだろ。それに俺たちはもうそんなに若くない、もくすぐ三十路だ…。あーあ、いつまでも若いつもりでいたが、30か…
「…私は直に魔の力が目覚める…!」
あ、こいつのこと忘れてた。
てか29にもなってなんだその決めゼリフ。もはや痛いを通り越して死ね。
「おまえ…最近なくなってきたと思ったのに…いい加減その中二臭いのやめねぇと死ぬぞ」
「私は死なない…むしろ死ねないかもしれない」
意味が分からない。
「というか、元々はお前のせいだぞ晴矢!」
「はぁ?何が?」
俺は何か風介の気を損ねるようなことしただろうか。いや、全くもって思い当たらない。
俺が昨日の晩、寝ている風介の髪をイタズラ心で1本引っこ抜いたの気づいてたんだろうか。
「…お前が、お前が上だから!私はもうすぐ魔法使いになってしまう!!」
「ぶっ」
飲んでたビールを思わず吹き出してしまった。待て待て待て、ツッコミどころがありすぎてどこからツッコめばいいか分からないレベルだ。
「それは…あれか?童貞のまま30になっちまうと魔法使いになるって都市伝説か…?」
「ああ」
馬鹿だ。すばらしきアホだ。ってかお前はまだ童貞だったのかよ。
まぁ…、掘られる気持ち良さ知ってるならなぁ…。
「諦めろ。受けキャラの運命だ。」
「魔法使いはいやだぁぁぁ!人間界にいれなくなるぅぅぅ」
どうやら風介は魔法使いは魔界に行かなきゃいけないと思ってるらしい。魔界がどこか知ってるのか。
「…晴矢は童貞か?」
「童貞じゃねーよ。お前で卒業しただろーが」
「女とヤったことないだろう」
「まぁ、ねぇな」
「じゃお前も童貞だ馬鹿やろう!!」
「馬鹿やろうはお前だ!童貞じゃねえっつってんだろ!」
ちょっと心配になってきたが、男を掘っても脱・童貞だよな?
「男で童貞を捨てれると思うな。」
「捨てれるよ!男を掘っても女に突っ込んでも対して変わらねぇだろうが!!」
「………突っ込むとか、やだ、やらしい」
「…………………」
風介が魔法使いになるまで、あと3ヶ月。