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□本望
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いつからこうなってしまったんだ。俺は悪くないぞ。あいつが、風介が全部悪いんだ。俺は、ずっとアイツが好きだった。それを風介に伝えると、俺を避けだした。男同士なのに気持ち悪い、だそうだ。憤慨した。こっちは死ぬほど好きなのに、アイツは俺の想いを認めてすらくれない。こんなことってあるか。だから、俺は悪くない。俺は被害者なんだ。そうだろ?


南雲とはよきライバルであり、話のあう友達だと思っていた。それまでは私も、南雲を友達として大好きだった。これからもこんな交友関係が続くと思っていたのに。それを壊したのは南雲だった。南雲は私に言ったのだ。好き、と。そのたった二文字が私達の関係を崩していった。私は男で、もちろん南雲も男だ。今まで南雲は私をそういう目で見てたかと思うと吐き気がした。それから、南雲を故意に避けだした。


「なんで、俺の事避けんの?」なんてことないこの問いにも風介は答えなかった。風介は、俺を避けている。間違いない。クラスが違うから元々会うのは少ないけど、あきらかにおかしい。授業終わって、飛んで風介のクラスに行っても風介はすでにいない。今までこんなことなかったのに。胸くそ悪ィ。そうだ、今日風介の家まで行ってみよう。


「……なんで、いるの…」思わず声が震えた。放課後、家に帰った直後に家のチャイムが鳴った。まるで見計らったように。すぐに振り向き、ドアノブを回す。ガチャ。目の前に立っていたのは見慣れた赤い髪。南雲だった。いくら仲の良いからって、私達は互いの家に出入りしたことはなかった。なんで、どうして、家が分かったの。自宅に入った直後、鳴り響いたチャイム。目の前には、先日私に好きだといいだした男。答えなんて、とっくに出てるじゃないか。


悪いが風介をツケさせてもらった。家の場所が分からなかったし、今後のために知っておきたかったから。風介がある家に入っていったから、すかさずチャイムを鳴らした。風介はすぐに出てくれたが、すぐに青い顔をして閉めようとする。俺はベタな新聞屋みたいにドアが閉まる前に敷居を踏んだ。風介は更に顔を青くしてドアをぐっぐっと閉めようとする。もちろん俺の足があるので閉まらないが。


怖い、怖い。どうして?私が何かした?「お願いだから、もう今日は帰って!」叫ぶと、南雲はニッコリ笑って、また明日な。と言った。ガチャン、ドアが閉まる音が確かに耳に響いた。南雲は帰ったみたいだ。
まだ動悸が止まらない。なに、今の…。散らばったカバンの中身を拾いながら考えた。まずいんではないか。相手は男が好きな気違いだ。更にストーカーまでするような奴だ。そんな奴に、家を知られてしまった。嫌な予感が頭の中をぐるぐる回る中、携帯が鳴り響いた。非通知だったけどはっとして、通話ボタンを押すと「………」所謂、無言電話だった。気味悪い、でも思い当たる節がある。「…南雲…?」言った瞬間、電話は切れた。


風介の家を出た後、風介に電話をかけることにした。非通知でかけてやれ。驚かせてやろう。プルルル、四回鳴ったところで風介は出た。「…もしもし?」やばい。出てくれたのはいいけど、なんか恥ずい。口がうまく動かねぇ。なんか喋らなきゃ。焦っていると、風介の声がした。「…南雲…?」ドキッ。思わず通話終了ボタンを押した。俺、何も喋ってないのに、風介は俺と分かってくれた。南雲って名前を呼んでくれた。やべー、嬉しい。




すれ違い




続きます

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