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□お前なんか大嫌い
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授業中。今日も俺はあいつを見ていた。でも、いくら視線を送ろうが、あいつは俺に気づくことはない。それは今までも、これからも、ずっと。
だって俺が見ているアンタは、前の席のあいつを見ているから。こうして今日も俺は独りで涙を堪えていた。


休み時間になると、俺の周りにはきまって女や男やら、大群がやってくる。人気者なのは嬉しいことだが、てめぇらがいるとあいつが見えねぇんだよ。女の1人は、ねぇ晴矢ぁ、と妙に甘ったるい声で甘えてくる。キメェ。
そうこうしても、あいつは俺に気にも止めず、仲の良い友達と喋っていた。くそ。なんでそんなに笑顔なんだ。お前は、俺に微笑んでりゃいいんだよ。


「南雲…話があるんだが」これはあれか、定番の『愛の告白』ってやつか?口元の緩みを隠しながら呼び出された場所に急いだ。結局話っていうのが、なんてことない。「同じクラスの倉掛が好きなんだが…」とのことだ。人生でこんなに浮き沈みしたのははじめてだった。


で、あれから何日か後。「倉掛に告白した」と報告をご丁寧にしてくれた。振られてしまったらしい。正直嬉しかった。俺は、好きな奴の幸せも願えないちっせぇ男なんだ。
しかしあいつは柄にもなくわんわん泣いていた。成功するとでも思っていたのか。……それほど倉掛を想ってたのか。後者だと思うとかなりムカつく。ムカついてもやっぱり相談にのってやる俺は重症だ。
だけど好きな奴から頼られるなんて悪い気はしない。


「南雲、聞いてくれ!」昨日までの落ち込みが嘘のように、あいつは笑顔で俺に語り出した。倉掛が断ったあと、やっぱり倉掛はあいつの事が好きだと思いなおしたらしい。何がやっぱりだ。ふざけんな。
「南雲ありがとうね」それだけ言い残してあいつと倉掛は寄り添いながら帰って行った。


馬鹿か俺は。
好きな奴の恋応援して、失恋して。


誰かを見つめるあいつが
誰かに微笑むあいつが
誰かを想うあいつの涙が
誰かに寄り添うあいつが

そんなあいつが
……俺は、涼野風介が大嫌い。










お題.確かに恋だった

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