Book

□残念ながらベタ惚れ
1ページ/1ページ



「狩屋」
「なんですか、」

振り向けばキスをされた。馬鹿じゃないのかこの人は。いくら2人きりとはいえ、部室の更衣室でキス、なんて……。

「やめてくださいよ、こ、こんな所で」
「誰もいないだろ」
「誰か来るかもしれないでしょ!」

あー、声が震える。柄にもなくドキドキしてる。顔が熱い。耳まで真っ赤だと思う。そんな俺を見て霧野先輩は笑っていた。
整った顔立ち。女がキャーキャーいうのも分かる、本当は分かりたくないけど。

「何言ってんだ、嬉しいくせに」
「う、嬉しい…けど」

霧野先輩は本当に性格悪い。
俺は休み時間に廊下ですれ違うだけでも心臓が高鳴るのに。それを知ってる霧野先輩はわざと、軽くぶつかったりしてくる。あ、ごめんな、とだけ言って。
それで、俺の反応を楽しんでるんだ。俺が遊ばれてるなんて最悪だ。

「…先輩いい性格してますね」
「ははっ、そんな先輩が好きなんだろ?」

本当やだ。何言ってもこの人に勝てる気がしない。ちょっと前までは俺が霧野先輩を遊んでやったりしてたのに。どうしてこうなった。

すすす、と霧野先輩が俺に近づいてきた。え、なになに。俺と先輩の顔の距離、実に10cmあるかないかぐらい。遠くもない、近くもない、微妙な距離。目閉じて、いつもより低い声で霧野先輩は呟いた。言いなりは嫌だけど、今からされるであろう行為は嫌じゃないので、従っとく。

まぶたをゆっくり閉じる。霧野先輩が俺の肩に手を置いた。近づいてくるのが分かる。この瞬間が一番恥ずかしいかも。早く終わってほしいし終わってほしくない…。

パシャッ

…なにやら今の雰囲気をぶち壊しにするような効果音が聞こえた。え?と思って目を開けて、最初に写ったのは俺が目を閉じてキス待ちしてる写メだった……。
それを撮った張本人は携帯を持ってニヤニヤしている。

「霧野先輩の馬鹿ー!なんつー写真を…!」
「だって可愛かったんだもん」
「やだやだ、消して下さい!」
「わっ、狩屋が暴れるから手がすべった。神童や天馬に送っちゃったよ」
「うわぁああぁぁあぁあ!!!」

やっとこさ携帯を奪い取って、データフォルダの俺の写メを消去。まさかとは思うがメールフォルダを開いた。うわぁ…本当に色んな人に送ってる。天馬くんや剣城くんや神童先輩、倉間先輩、浜野先輩、三国先輩etc...

「馬鹿!最低!なんで送っちゃうんですかぁ!!」
「だからぁ、手が滑っちゃったの」
「どんな滑り方したら写メ添付して色んな人にメール送れるんですかぁあ!!」

もうやだ。泣きたい。明日学校休みたい…。とか思っていたら俺の携帯が鳴りだした。…天馬くんからメールが……。

----------
From.天馬くん
title.霧野先輩から来たんだけど
----------
本文
狩屋何この写メー!
すっごく可愛い!(^O^)
-END-
----------

そのメールにはご丁寧に数分前に撮られた写メが添付されていた。…天馬くん……。はぁ。終わった。すぐにその写メ消して!と返信してみたけど、嫌\(^o^)/と来た。ケンカ売ってんのか。

「ぶはっ、良かったな狩屋。かっ…可愛いだって……くくっ」
「もう!霧野先輩のせいですよぉー!」

年下の俺だけど、俺より年下に見えるようなちょっかいを出す先輩。ムカつくし、すごくイライラするけど……

「狩屋、俺のこと嫌い?」






嫌い……なわけ、ないじゃないですか。

「いっ…言わせんな!ハゲ!」
「はいはい…って誰がハゲだこら」



.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ