book2

□みなもにうつるきみ
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※死ねた注意







がぼがぼがぼっ、

浴槽から水が溢れる。右手で押さえつけている赤い頭は逃げようと激しく暴れる。
その赤い髪を引っ張りあげる。

が、げほげほっ!、っぐぇ、かはっ、

咳き込むようなカエルのような滑稽な音を出す鳴子がおかしくてたまらなくて、俺はまた鳴子の頭を押さえつけ、水面へと落下させる。

じたばたと頭も腕も脚も激しく動かす鳴子と微動だにしない俺。
まぁ左手一本で鳴子の両腕を背中に押さえつけているし、脚も俺が体重をかけて踏んでいるから暴れるといってもタカが知れている。
アホだな。学習しろ。力の差があるかぎり俺の手から逃げ出すことはできないんだからせめて酸素を無駄なく使うんだな。

ぐいっと赤髪を引っ張る。
毎日俺が浸かる風呂の水面に写る鳴子はぜぇぜぇと肩で息をしながら必死に酸素を吸い込んでいた。


「げほっ、っが!、……ごほっ、」
「苦しかったか?」
「なんっ、げほ!お前、こっ、ろす気か…!」
「はは……」

殺すと、思った?


意地悪な質問をしてやれば表情が一瞬で青ざめる。


「な、なんや、なん、で、こんなっ……」
「……なんでだろうなぁ」


俺にもわかんねぇや、言い終わると同時にまた鳴子は水中へと顔だけダイブした。俺の手によって。


また抵抗するように暴れる手足。だけどさっきまでと違うのは、……震えている?
苦しいのか?怖いのか?死ぬのが?

……確か、一番苦しい死に方は溺死だと、昔なにかの本で読んだな……。


鳴子を引き上げる。


「なぁ苦しいか?辛いか?もう嫌か?」
「げほげほっ!がはっ、ふ、」
「なぁ、






死にたくないか?」



薄紫色に変色しかけの唇が微かに動いた。



『たすけて』




「嫌だ。」



もう何度目だろう。こうして右手が冷水に晒されるのは。冷えきってしまって、ふやけてしまっている。
鳴子は暴れた。これでもかと言うほどに。

暴れて、暴れて、暴れて、
手足の動きが一瞬止まって、ガタガタと痙攣しだす。



「苦しいよな、鳴子。もう終わりにするからな、な……。」



人が死ぬ瞬間。

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