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□〈好き〉の反対は
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リザやハボック達はもう帰ってしまった。
エドワードはただ書類に向かう漆黒の髪と瞳を持つ青年から目が離せなかった。

「いつまでそうしているのかね,鋼の」

ロイに何か言われるとまるで興味のないふりをしてしまう。

「何が」

「そんなふうにじっとみられては仕事が出来ないじゃないか」

「なに言ってんだ,無能。いいからやれよ」

ロイは小さくため息をついてペンを動かし始めた。
カリカリというペンの音だけが執務室を支配する。

「…鋼の」

「なに」

「〈好き〉の反対はなんだと思う?」

「は…?んなもん〈嫌い〉に決まってんだろ」

「違うな」

「じゃあなに」

「教えてほしいか?」

「…別に」

「それだよ」

「は?」

ロイはエドワードの寝転がっているソファーに近づいてきた。

「頼むから,私の前ではそんな態度をとらないでくれ」

「近ーんだよ。意味わかんねぇし」

「私は君が好きだよ,エドワード」

「なにふざけたこと言ってやがる。仕事しろ,仕事!」

エドワードの顔は真っ赤だった。

ちくしょう。アンタに先言われるなんて。オレの方がずっとずっとアンタのこと好きだ。

「〈好き〉の反対はね」

ロイの顔が近い。
オレ,緊張して壊れちゃいそう。

「〈無関心〉だよ」

耳元で囁かれる。オレの耳に大佐の息がかかる。

「だから君には無関心な態度をとってほしくない」

「…っ」

「どうした鋼の?」

「いっいいから早く仕事終わらせろ!待ってんの飽きたんだよ!あんまり遅いと先帰っちまうからな!」

エドワードが必死に喋る。可愛くて可愛くてからかいたくなった。

「帰るとは,どこに?」

「たったったっ大佐ん家だよ!悪ぃかよ!」

いいや,何も悪くないさ。ただ…

「待っててくれんかね。すぐ終わらせるから。」

「早くしろよ」

オレは大佐のこと好きなんだ。
無関心?違ぇよ。無関心なふりしてるだけだっつの。気づけよ。

「…鋼の?」

仕事が終わり,静かになったと思ってソファーの上を見てみると
さっきまで赤くなっていた恋人が寝息をたてて寝転がっていた。

「待ちきれなかったのか」

ロイはほんの少し唇の端を上げて,エドワードを背負った。
執務室の電気が消された。

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