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□第5話
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家に入ると誰かの泣く声が聞こえた。
誰が泣いているかなんてわかる。
お母さんが泣いてるんだ。
私は気づかれないように家を出た。
でも行くところなんてなくて、居場所なんてなくて。
だからもう子どもたちが帰ったあとの静かな公園に行った。
ブランコに座って、1人。
大丈夫。
慣れてる。
お母さんが泣いているところなんて何回も見てきた。
両親のケンカだって、見てきた。
ずっとずっと見てきて、1人で我慢した。
だから、平気。
〜♪
ケータイの着信音が鳴る。
ぼーっとケータイを手に取る。
「もしもし…?」
『あ、奏?俺だけど』
「真紘先輩…どうしたんですか?電話なんてめずらしいですね」
『ん…今さー…どこいるの?』
「えっ…家…ですけど」
私は、嘘をついた。
本当のことを言ったらすべてこぼれてしまう気がした。
『お前の家ってどこ?』
「なんでですか?」
『は?お前の家行くからだろ?』
困った…家にいるって言っちゃった…。
「先輩…?」
『なに?』
「さっきの嘘。学校の近くの公園にいます」
『ふーん…まぁいいや。そこ動くなよ』
「は?えっ⁉ちょ、まてよ‼」
電話は一方的に切れた。
真紘先輩が電話を切るという強行突破をしてきた。
少したって真紘先輩がきた。
息があがっているから走ってきたらしい。
「ごめん待たせて」
「いえ。ごめんなさい…走らせちゃって」
「別にいいよ。バスケ部だし?」
そう言って笑う先輩は私を元気にしてくれる。
「じゃあもっと走らなきゃ」
「うっわ!鬼だな」
また笑わせてくれる。
だけど私、真紘先輩は泣いているように見える。
……なんで?
「奏…元気ないね」
「別に。超スーパーミラクルハイパー鬼元気ですけど」
「バーカ」
目の前に立っている先輩が私のほっぺをつねる。
「にゃーにーするんでふは!」
「え?つねってるだけ」
「知ってます」
「うん」
「うんじゃなくて」