ノベルズ

□微笑んだ蝶々
1ページ/10ページ

桜の花びらが舞う季節に、無邪気に笑いながら―――



「……これ南東の風だよね〜?」


なんて、言う風情も何もないような奴に、俺は出会った。








水原杏理―――ミズハラアンリ―――は、学内でも有名な変人だ。
しかし、だからと言って友達がいないと言う訳でもない―逆に慕われてるのではないか―。
そんな水原杏理は、見た目は今時の男子…よりも少し崩しスタイルで、所謂チャラい格好であった。
それがとても似合っているのには、多分、いや確実に顔が良いからである。

水原杏理はモデルである…と言っても違和感はないだろう。
何せ、とてつもなく綺麗な顔をしているのだから。
それくらいに水原杏理は顔が良かった。

まぁ……それが男子校ともなると機能しなくなるのだが。




ちなみに、俺、榊帝―――サカキミカド―――は、まぁごく普通の男子高校生だ。
自分で言うのもアレだが、俺はモテる。
街を歩いてたら逆ナンされるのはしょっちゅうだし、それは気恥ずかしいが嬉しくもある。
友人も普通にいるし、部活もバスケ部所属、勉強は…まぁ、ちょっと足りないが、なかなかに充実した日々を送っている。


「榊ー、飯食おうぜ」
「おう…ってワリィ、今日購買だったわ」
「え?珍しくね、榊の母ちゃん特製弁当がないなんて!」

そんなに珍しいのか。

「…お袋今日朝から失踪してて」
「はぁ?!失踪って、ヤバくね?」
「いや、特には」
「何でだよ!!」
「だって、山菜採りに行くから失踪するって言ってたから」
「………さすが、お前んちの母ちゃんだ」
「何だそりゃ」


俺の母親は、会話からしてわかるように、天然である。
天然のものが食べたいが為に、自分で食材を取りに行ってしまう習性を持っている。
それで何日かいなくなる時がたまに、極稀に起こる。
それがたまたま今日だったわけだが。

困ったことに、お袋の料理はうまい。

だからどうと言うわけもないが、うまいからこそ、食べられないのは少し堪える。



これが、偶然が重なり合って出来たきっかけと言う奴なのだろうか。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ