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□はじめまして
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僕は、なんだかドキドキしてます。




父さん、日本は自然が多くて素敵な場所ですね。

ビルが隙間無く立ち並ぶ所から少し離れると、こんなにも森が―――果てしない。

………バスに乗ってからもう随分経ったけど、いつまで経ってもつかない。

しかもさっきから周りは森の景色ばかり。

本当にこんなところにお金持ち学校があるのかな?

と言うか、本当にこんなところに日本料理のスペシャリストがいるのかな。

なんだか不安になってきた。



……………あっ。

『私立晴嵐学園』

あっあっ本当にあった!!

良かったぁ、うん、良かった!

「お客さん、着きましたよ」

「あっはーい」

降りる為に荷物を持っていると、とても優しげな初老の運転手さんが話しかけてきた。

「珍しいお客さんだねぇ、今の時期にこの学校に転入かい?」

「はい。今まで海外に住んでいたんですけど、ついこの間帰ってきたんです」

「へぇ、すごいねぇ、まだ若いのに」

「いえいえ、そんな事ないです。僕なんてまだまだで、この学校に学びに来たんです」

「そうかいそうかい。……頑張ってね」

「はい、ありがとうございます!!」


本当に優しい人だ。
日本人って言うのは、こういう優しさを持った人が多いから、すごいな。

こういうのを「思いやりの精神」って言うんだなぁ。


そうしてバスを降り、校門に入る。

開け放たれた門をくぐり抜けて見ると、そこにあったのは、王様の城。


―――ではなく、校舎。

タイムスリップしたんじゃないかと思うくらいに立派な校舎。

手入れされた木。

太陽の光に反射してきらきら輝いている噴水。

ここは本当に学校なのかな…。

不安になってきた…

一本道だから迷うことは無いと思うけど。


「あっ…」

だ、誰かいる!?

メシア様!?

……ではなくて。

「あ、こんにちは。李さん、で良かったですか?晴嵐学園へようこそ。私は田畑聖悟です。李さんの案内役を勤めさせて頂きます」

な、なんて親切な人なんだ!!

「田畑さん、僕は李春芽です。案内よろしくお願いします!ちょうど、不安になっていた所なんですっ」

「そうなんですか、それは良かったです」

にこり、と微笑む田畑さんは、とても綺麗な顔をしていた。

ただ、少し疲れたような顔をしているのが気になるところなんだよね。

でも初対面でいきなり言うのはなんだし…僕は言わないことにする。
「さぁ、ご案内します。まずはこちらへどうぞ」





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