連載

□プロローグ〜ただいま、日本〜
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五年前……



「え、留学?どこに?」
「どこって春芽…イタリアだよ、イタリア」
「い、イタリア!?ホントに!?」
「ああ、父さんは嘘つかないぞ」
「ホントにホント!?わぁっ、本格的に出来るんだねっ」
「もうそろそろ俺の店からお前の店にシフトチェンジの準備しても良いだろうしな」
「父さん、僕頑張るね!!」
「ああ、頑張れ」









「ん……」


あれ…夢、だったんだ…

それにしても、随分と懐かしい夢だったなぁ…。

これが過去夢って奴か…。


5年、か。

長いような、短いような、そんな年月だった。

イタリアにも行った、フランスやトルコにも行った。

怒涛の毎日で、でも料理を覚えて行くのが楽しかった。

……でも、今日でそれもおしまい。

僕は日本に帰らなきゃいけない。

と、言うよりも、日本料理にも手を広げていきたいから。


それでも、今日が最後だなんて、―――あまり、楽しくない。

っだ、大丈夫!!

涙でわかれるより、笑顔でわかれる!!

それが僕のポリシーなんだ。

お世話になったシェフのアドリアーノさん。

それから、その奥さんのカメーリアさん。


『今日でシュンメイともお別れか…寂しくなるな』

『えぇ。何せ、本物の家族のように暮らしてきましたからね』

…やだ……そんなこと、言わないでよ。

『シュンメイ、また寂しくなったらいつでも電話しなさい。私たちはちゃんと待ってるからね』

『アドリー…』

『定期的に手紙もちょうだいね。メールだともの寂しいもの』

『カーリー…』


別れは笑顔、って決めてたのに…。

これじゃ、無理だよ…


『っ…う…ッ僕寂しいよ…っ絶対、絶対手紙書くから、電話するから…っ』

『おやおや…』

『そうね、私たちからもちゃんと連絡は入れるわ』

『そうだな』

『約束だよ…?』

『もちろんだよ、シュンメイ』

『ありがとう……大好きだよ、アドリー、カーリー』

『私たちも、シュンメイが大好きだよ』



ありがとう、アドリー、カーリー、僕は絶対に忘れないよ、ずっと。


『ほら、乗り遅れるよ、シュンメイ』

『はい…じゃあ、またね』

『ああ、また』

『いつか会いましょうね』

『うん…っ』


そう、最後の別れじゃないんだ。

だからほら、笑ってよ。


『またね、アドリー、カーリー』


今見せるべきは、飛びっきりの笑顔だから。


いつか、また、帰ってくるから。


約束、だよ。





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