連載

□はじめまして
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「ただいま戻りました」

「ああ、やけに遅かったな」

「……待っててくださったんですか?」

「ああ?…今日は仕事が多かったからな」

……嘘、ですよね。

これだから、私は竜宮寺先輩を嫌いになれないのです。

「ところで、何でこんなに遅かったんだ?」

「あ…はい。転校生の方が、遅れて来たものですから…」

「何?遅れて来た?」

「はい。それで少々時間が掛かってしまいました」

「なんだ、失礼な奴だな……」

不機嫌そうに顔を歪める竜宮寺先輩。

珍しいですね…。

そう言えば、竜宮寺先輩ってこういったルールとか約束を破る人は虫唾が走るくらい嫌いだと言っていたような…。

「……じゃ、帰るか。行くぞ」

「あ、はい」




次の日。

私は信じられないことを耳にしたのです。

「会長様が!?」

「そう、転校生を気に入ってしまわれたんだって」

「どうして……」

「僕、顔見たけど普通のどこにでもいそうな顔だったよ」

「理事長先生の甥だって言うし…なんかなぁ…」

「しかも副会長様も書記様もお気に召したみたい」

「何それ!?」

私は、それを聞いて頭がフリーズした。

会長が、竜宮寺先輩が?

どうして……?
別に付き合ってる訳でもなく、周囲にすら、私が竜宮寺先輩を好きであることも知られていないから、どうすることも出来ないけど。

どうしようもない状況に、私は苛々、もやもやしていた。

いち早く状況を知りたくて、私は生徒会室に向かった。

それが単なる噂に過ぎない、と言うことを信じて。


しかし、現実はそう甘くなく。

「あっ聖悟!!昨日はありがとなー!!」

「い、いえ……」

何故生徒会室に縁くんが…、とか、何故こんなに生徒会室が汚れているのか、とかそう言うのよりも。

「よう、田畑。こいつ結構面白いのな。俺、気に入ったぜ」

どうして……あなたまでもが…。

副会長も、書記も…どうして?

私は深い絶望感を味わっていた。

そこから先は、あまり覚えてなく、ただ、いつの間にか自室に着いていた。

涙も出て来なかった。

私がこれまで懸命になって、ようやく気に入ってもらえたのに、縁くんは、たったの1日で気に入られた。

もうおかしくて、笑うしかなかった。

それも、1人部屋では虚しく響くだけに終わった。



それからは悲惨でした。

縁くんにずっと一緒にいて、働かない私以外の役員。
生徒会役員だけでなく、風紀委員や人気の美形たちにも気に入られた縁くん。

それで反感を買わないわけがなく、親衛隊の人たちは制裁の名目で縁くんに様々な嫌がらせをした。

それが段々と泥沼化し、遂には他の関係ない人たちが被害者になっていく。

私は仕事に追われて、寝る間もなく、為す術なく仕事をしていた。



………。


「……そうだったんですか…」

今、そんな事になっているんだ…。

ふと、田畑さんを見ると、辛そうに顔を歪ませていた。

「あっ…ごめんなさい、いきなり長々と…」

「いえ、大丈夫ですよ。僕、頑張りますね」

「えっ?……あ、はい…。あ、じゃあ、部屋までご案内しますね」

「よろしくお願いします」


さて…、…どうしようかな。




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