連載
□はじめまして
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「ここが、私たち学生が住む寮です」
そういって滑らかな仕草でこれまた立派な建物を示した。
「…………」
「最初はさすがにみんな驚きますよ」
あ、やっぱり…
これ、何階建てなんだろう。
「これ、何階建てなんですか?」
「10階ですね。ただ、地下に一階あるので実質的には11階です」
「じゅ、11……」
高いなぁ…。
地下もあるなんて、何があるのかな。
「ちなみに、地下はちょっとしたスーパーになっています。実用品や食材はそこで買ってくださいね。それから、一階はロビーになっていて、寮監の方がいらっしゃいます。更にコンビニエンスストアがありまして、地下一階のスーパーは5時から23時までの営業ですが、こちらは24時間営業ですので利用してください」
「おぉ……すごいですね」
「コンビニエンスストアには私も助けられています」
「そうなんですか?」
「はい、最近は特…いえ、まぁ…助かってますね」
……最近は特…って…、田畑さん、最近は特にって言いたかったんじゃ。
とすると、顔色が悪いことと何か関係があるのかな?
ううん……気になるなぁ、けどいきなり聞くのも…
第一、いきなり「顔色悪いのと関係あるんですか」なんて
聞いたらきっと田畑さんは気を損ねるかもしれない。
田畑さん必死に隠そうとしてるし、いや、でもなぁ……
僕の料理人としての本能がうずうずしちゃって…。
「た、田畑さん」
「?何でしょう」
「最近、ちゃんとした食事、とってますか?」
ビクッ
田畑さんはそれまでにこやかに笑っていたのに、僕がそう聞くと、笑みを消して肩を強ばらせた。
本当にマズいことを聞いてしまったようだ……
ああ、いきなりなんて事をしちゃったんだ…
けど、
「……そう、ですね。最近まともな食事はしていません…」
田畑さんはそう答えた。
「え……」
「来たばかりの李さんに言うのはなんですが、ここは今、最悪の状態にあるんです」
この学校が最悪の状態?
「それはどういうことです?」
「……崩壊寸前、なんですよ」
崩壊寸前!?
い、一体何がどうなったら崩壊寸前になるんだろう?
学校がつぶれる、しかもお金持ち学校なのだから、よっぽどの事があったに違いない。
「―――詳しく、教えてください」
田畑さんは、コクリと頷いた。
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