君僕

□雨フレフレ
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―――― ザァァァァァ



どんなに待っても止まない雨。

それでも私は、止むのを信じつづけた。



「…傘、持ってくればよかった…」


ボソッと呟いた独り言は、誰にも聞かれるわけもなくただ広い校舎内を駆け巡った。




空から降ってくる雨をただぼぅっと見て、どれくらいの時間が経っただろうか。


コツコツという足音がしたかと思うと、私のすぐ横に止まった。



チラリと横をみれば、そこに居たのは祐希くんだった。


「……雨ですね」

「…うん、雨…」

「傘とか持ってたりします?」

「持ってくるの忘れちゃった…祐希くんは?」

「……忘れまし、た」


淡々と進む会話になんだか可笑しさを抱きながらも、そこはとても心地の良い穏やかな空間だった。



「天気予報、外れちゃったね」

「うん…ま、俺の信じるものは俺自身か悠太だけだしね」

「ふふっ…そっか」



そこに私の名前が入っていないことに何故かガッカリしてしまった。


「…雪」

「!?」


いきなり私を呼ぶ祐希くんの顔が近かった。


「なっ、ゆゆっ祐希くんっ!!?」










どんどんと近付いてくる祐希くんの顔に、私は思わず動けずにいた。












そして…














「…あの、何をしてるんですか?」



ビクッとして振り返ると、部活終わりなのか悠太くんと春ちゃんの姿があった。


春ちゃんは顔を真っ赤にさせている。




「いやぁ、二人の姿が見えたからビックリさせようと…」

「それでキス真似ですか。雪に謝りなさい。」

「ごめんなさい」

「……ぃ、いえっ…」



本当にはキスしてないはずなのに、私の心臓はみんなに聞こえてしまうんじゃないかというくらいにうるさかった。



「うわー、雪顔真っ赤だー」

そう言ってからかってくる祐希くんに、私は顔を背けるしかなかった。



「ていうか祐希何してんの?折り畳み傘持ってるでしょ?」

「ぇえっ!?そうなの祐希くん?さっきは持ってないって……」

「傘は持ってません。俺が持ってるのは折り畳みなので」


なんて屁理屈……でも……………



「ほら、雪に折り畳み貸したげなよ。祐希はお兄ちゃんと」

「え〜、悠太とぉ?俺、雪とがいい」


そういって自分のものだと言わんばかりに私を両手ですっぽりと抱えた。


それにまたもや顔が熱くなるのを感じる。


さらに祐希くんは、私の耳元で囁いた。












「さっきの続きはまた今度」







そんな祐希くんをひっぺはがした悠太くん。

そしてそれを見て微笑んでいる春ちゃん。




胸の高鳴りがいつまでも落ち着かなくて、祐希くんの言った言葉がぐるぐると頭を巡った。






雨の日も、悪くない …―――――




おわり


 
 

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