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前回の拍手閉じ込めてみた2ページ目からの続き。
スマホの中に坂田銀時がいた。
「は?何これ」
『坂田銀時だけど』
「いやそれはわかってるけど」
話の途中で何の脈絡もなく、私が唐突に差し出したスマホ。
親友とも呼べる目の前に座る彼女は、まじまじと画面を凝視した。
まるで坂田銀時というキャラを初めて目にした人間のようだ。
彼女の視線の先には、だらりと寝転がった坂田銀時。
こちらをちらりと見たかと思えば、大きな欠伸をした。
突然スマホの中に姿を現した彼は、今も画面の中に存在している。
順応性が高いのだろう、最近では自分の家のごとく画面中でくつろいでいる。
『ねえ、これどういうこと?』
「何が?っていうかそれこっちの台詞」
『?』
私は首を捻る。
なぜだか彼女にじっとりとした眼差しを向けられている。
そんなに危ないウイルスなのだろうか。
そういうことなら早急にこの坂田銀時を排除すべきだ。
「どこでこんなアプリ見つけたの!?」
『…アプリ』
「だってそうでしょ!どこのサイト?教えてよ。あたしも携帯の中に土方さん住まわせたいィィィ」
いいな、いいなと頻りに唱える彼女。
対して私は眉をひそめた。
どうやら彼女は“携帯の中にいる坂田銀時”をアプリの機能だと思ったようだ。
パソコンやインターネット、IT系に精通してる彼女がこのように言うとなると、これはウイルスではない…らしい。
が、一応確認する。
『こういうウイルスとかって流行ってたりとかしてない?』
「ウイルス?ないない、そんなの。それよりほんとにどこでダウンロードしたの?」
『ダウンロードっていうか、突然画面の中に入ってた』
「その冗談あんまり面白くないよ。ほら、出し惜しみしてないで教えてよー」
本当のことを言ったというのに信じてもらえない。
どうしたものか、と考える私をつつく彼女。
彼女も私同様に銀魂好き―ちなみに土方推し―なので、諦める気配がない。
「ねえねえ、その銀さんと話が出来たりするの?」
『うん、まあ』
答えつつ、彼女からスマホを返してもらい、既に消灯してしまった画面を付けてロック解除をした。
坂田銀時の姿がお目見えする。
私は彼に呼び掛けた。
『ねえ』
「んあ?何だよ。こっから俺を出す手段でも見つかったか?」
『それはまだ』
「マジでか。いい加減退屈で死にそうなんですけどォォォ」
坂田銀時の切実な言葉に私は肩を竦める。
解決法が見つからないから現時点ではどうしようも出来ない。
そんな私と彼とのやり取りを聞いていた友達が口を開いた。
「え、何かその会話って変」
『だからさっき…』
「ちょっと待って、これアプリじゃないの?」
『うん』
「は?じゃあ何?」
『それがわかんないから診てもらったんだけど』
はぁぁぁぁ!?と叫ぶ彼女。
周りにいた人間がこちらを振り返る。
私はしーっと口に指を当てた。
「まさかこれ、マジの銀さん!?ちょっと、ええっ」
『ウイルスじゃないなら多分』
「嘘…、そんな逆トリップみたいなことって…はぁぁぁぁ!?」
信じられないと目を見開き、心の声を人目も憚らず繰り出している。
彼女の驚きはよくわかる。
私だっていまだに半信半疑なのだ。
そんな気持ちで画面を覗き込めば、坂田銀時はうるさそうに顔をしかめていた。
「さっきから何やかましくしてんだよ。“はぁぁぁぁ!?”って何回も何なの?鳴き声ですかコノヤロー」
終わり