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□真っ赤な紅葉と君の顔
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「ん、?」


私は携帯の着信音で目が覚めた。

流れてる音楽はずっとお気に入りの洋楽。
勉強嫌いで、英語なんて勉強しようとも思わない私だけどこの曲だけは歌詞の意味を知りたいと思って
中学生の時、人生で初めて辞書をひいた。


苦労して知った甘いラブソングのメッセージはきっとおばあちゃんになっても忘れないだろう。


そしてこのラブソングは
ベタだけど彼氏からの着信音だったりする。

私の彼氏、武田好誠からの。

「もしもし?」

その甘いメロディーを10秒聞いて
電話に出る。


「おせぇよ。」


どんなに遅れて電話に出てもきっと好誠は待ってそうだけどね。


「ごめんね、寝てたの。」


「もう昼の1時だぞ?」


「昨日遅かったから。」


「……ふーん。」


遅かった理由は好誠もしってる。

私はクラブで働いている。
そこそこ人気のあるクラブだ。

そして、週4のペースでそこでバンドの仲間とステージに立ってたりする。

最初は遊び半分だったけど
いつの間にか全員本気になってしまって勿論私も真面目に取り組むようになって
ギャラまで貰えるようになった。

最初に比べたら評判も良くなってきた。


だけど、多少目立つようになると
色んな揉め事も起きる。
あ、メンバー同士は全然問題ないんだけどね、


男に絡まれることも多くなったし、
女の子から恨みを買うことも多くなった。何故私を恨むのかは一向にわからないんだけど。

この前は女の子にいきなりお酒ぶっかけられた。
着替えもなかったし、皆がする心配そうな顔も見てられなかったしで、
早々と家に一人で帰ろうとしたら知らない男が送ってくれるとしつこかった。
帰り道をしつこくついてくるから
途中で好誠に連絡したら鬼の形相で飛んできてくれた。
そのあと私は好誠に怒られたんだけどね。



毎回こんなことがあるって訳じゃないし
殆んど毎回バンドの皆で帰るから危険は少ないけど、



やっぱり危ないことから100%逃れられる事はないから好誠は良い顔をしない。


「で、どうしたの?」


「暇だったらどっか連れてこうと思ってよ。」


「紅葉狩りとかどう?」


「いいぜ。
10分くらいでそっち着くから待っとけ。」


「はーい、って、え?10分?」


もうちょっと待って、と言ったときにはもう電話は切られていた。



もう、まだ寝癖もついたままなのに。




それから12分後、
何とか準備を終わらせた私はやっとアパートのドアを開けた。

下を見るとバイクに股がる好誠が見える。


こんな短時間で準備させたんだから少しぐらい待たせよう。そう思ってわざとゆっくりと階段を降りる。


「おせぇ。」


私を視界に入れた好誠は眉間にシワを寄せている。


「さっき起きたのにこんなに早く準備したんだから誉めて欲しいんだけど。」


「よく頑張りましたー。」


「感情はいってなーい。」


「当たり前だろ。」



二人で少し笑って
好誠は慣れた動作で私を後ろに乗せる。






「わー!綺麗だねー!」


思いの外綺麗な景色に
思わずいつもより少し高い声が出る。


「おー綺麗だなー。」


好誠も純粋に凄いという顔をしてる。



しばらく紅葉を堪能して、
途中のコンビニで買った食糧に手をつける。


朝も昼も食べてないから流石にお腹減ってきた。



「そういえば、何で紅葉狩り何だよ?」


「んー?何でだと思う?」


「質問し返すな。」


「まぁまぁ、答えられなかったら教えるから。」


「なんだそれ、

あー、そうだな

テレビで芸能人が紅葉狩りしてんのをみた。とか。」


「ハズレー。」


「んだよ、いっつもそんな理由じゃねーか。」


「今回は違うの!」

「じゃーなんだよ?」

「私たちが初めて会った時の事、覚えてるでしょ?」


「………………あんま思い出したくねー。」


私たちが初めて会ったのは中三の時。

仲の良い友達が武田好誠に告白するからついてきて、と半ば強制的に連れてこられた時だった。

違う中学だったけど、好誠の名前くらいは知っていた。有名人だったからね。



「好きです!!」

「………あんたの事、全然知らねーし、いきなり言われても迷惑だ。」

「…………………っ、」



友達と好誠から少し離れたところで私は見ていた。


しかし、好誠の振り方と友達の泣き顔を見た瞬間
私は好誠に歩み寄って思いっきり平手打ちした。


「最低!」


そういったあとに目の前で私を睨み付けてくる頬に紅葉が浮かんだ男が誰なのか思い出した。


「……………」

「……………」


でもここまで来たら引き返せない、と負けじと睨み返した。

「ごんべぇ、大丈夫だから!
もう行こう!」

友達が目を真っ赤にしながらも慌てて私たちの間に割って入って、
最初と同じように私は半ば強制的に連れ帰られた。




「あー、まじで思い出したくねぇ。

あの時は調子乗ってたんだよ。
あの子にも悪かったな、って思ってんだからな。」


昔話をあの時叩かれた右頬を撫でながら決まり悪そうに聞いていた好誠。
あのあとちゃんと好誠は謝りに来て
そっから私たちは時々会うようになって今に至るのだ。




だから紅葉はある意味二人の思い出なのだ。


「ふふっ、でも本当にあの紅葉は綺麗だったなー。」

「やめろって。」

「冗談よ、冗談。」



それからまた二人で景色に見いった。
沈黙が心地よい。


「♪〜」


無意識に歌い出したのはあの、お気に入りの曲。


「それ、好きだよな。

ライブでもよく歌ってるし。」

「うん、好誠からの着信音もこれだよ。」

「それは知らなかったな。」

「この曲めちゃくちゃ甘いラブソングなんだけどね、

最後のフレーズ、何だと思う?」


「最後?

愛してる、とかじゃねーの?」

「ありきたり。」

「んなもん思い付くか。」

「ロマンがないのよロマン。」

「ロマン何てもってねー。」

「武装の頭に聞いた私が馬鹿でしたー。」

「るせっ、
で、最後何なんだよ。」

「んとね、


あの紅葉より鮮やかな赤の愛を君にあげる。

なの。」

「…………………」

「私、初対面で好誠にあげちゃったー。」

「しつけーぞごんべぇ!」

「あははは!」

「笑うな!」

「だって、ははっ!
やばっ、笑い止まんない。ぶはっ!」

「ごんべぇ、お前帰ったら覚えとけよ!」

「きゃー、変態ー。」

「感情はいってねーぞ。」

「私も帰ったら真っ赤な愛をあげるね?」


「んなっ!」

「顔真っ赤ー。」

「うるせー。」

「好誠ー。こっち向いてー?」

「うるせー。って言ってんだろ!
お前は紅葉見とけ!」

「照れ屋さーん。」

「うーるーせー。」

「あははは!!」





真っ赤な愛を君に、
それでも足りないだろーから

直接触れて愛を伝えよう。




――――――――――――

ふふ、洋楽で紅葉が歌詞に出る歌とかあるんですかね。笑

そして、クラブとか全く知らないのに入れちゃいました、
ここ違うよ!ってのがありましたら教えていただけるとありがたいです!

そして!書いてて楽しかったので良かったと思います、丸!

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