SS

□その音、君の音。
1ページ/1ページ


ゴソゴソ、

夜中にこんな物音がするとき、

私の心臓は妙に波打つ。

その音の発信源なんてわかりきってるのに。

「また勝手に入ってきたの?将五。」

ビクリ、と影が揺れる。

「悪い起こしちまったか。」
「いつものことでしょ。」
「今日、兄貴が家いるから、
この時間に物音たてたらどやされるんだよ。」
「私がどやさないとでも?」
「どやさないだろ?」
「……………」

事実だから黙ったら暗い部屋に
将五のくぐもった笑い声が漂った。

「で、今日もまた喧嘩したの?」
「いつもしてる、みたいな言い方だな。」
「してるじゃない。」
「最近だろ。いつも通り怪我の手当てしてくれ。」
「はいはい。」

十三さんのせいになんかしなくたっていいのに、分かりきった嘘をつくのはどうしてなんだろう。

「はい、終わり。」
「いてっ!傷の上叩くなよ。」
「ごめんごめん。」
「反省の色が無い。」
「悪いと思ってないもん。
ご飯、晩御飯の残りでいいならあるけど。あ、今日お湯はってないから入るならシャワーね。」
「いや、今日はどっちもいい。」

眠いから寝る。


ほんと、我が儘な奴。

私の気持ちも知らないで、
私を幸せに包んだまま

まるで子供みたいに二人で布団にくるまるんだ。


「おやすみ、将五。」

それが私の今日一日に発する最後の音。

で、君の最後の音はそれの返事。



でも、今夜は妙な間がある。

背を向けたまま返事を待っても返ってこない。

「将五?」

あ、私の最後の音が変わった。

「好きだ、ごんべぇ。」


その音、なんて甘美な音。


君から流れる音は、
私を溶かしてしまう。
私を幸せにしてしまう。



「私も、好き。」




ねぇ、私の音は
将五に何か影響を与えてる?










「俺は幸せ者だな。」
「どうして?」
「お前が俺の腕のなかにいるから。」


君のその音、私の幸せの原因。



―――――――
村田くんどっから入ったんだろーか。笑

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ