小説
□甘く甘い
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「あげるんでしょ?」
「えっと…」
「あげないの?」
こんなに寒いのに嫌な汗でジメジメとしている。
うーんと唸りながら斜め後ろを振り返ったとき、ルキアに気づいて目をそらした一護がうつった。
そんな行動が、ルキアの何かの怒りに火をつけた。
ルキアは何かを決心したようにふうっと息を吐くと、わざと声のボリュームを上げて言った。
「黒崎君になんかあげませんわ!!むしろ、大っきらいですから!!」
叫んだわけではないがクラスにいたほとんどの視線が一斉に一箇所に集まった。
ルキアではなく…
一護に。
一護はなんとか変な誤解を解こうと必死に言い訳を考えた。
「は?何言ってんだ朽木?別にお前から貰いたいなんて思ってねぇよ!変な誤解招くようなこと言わないでくれませんかね」
ついカッとなって口から飛び出したただのでまかせ。
しまった、と思った時にはもう遅く、教室から出ていってしまったルキアの目には、うっすら涙が浮かんでいた。
「一護、早く追いかけなよ!」
「何で俺が…「黒崎君っ!!」
一護の言葉を制したのは、滅多に見せることのない怒りの感情を露わにした井上だった。
「井上……っつーか、最初に意味不明なこと言ってきたのはむこうだろ!?」
「バカっ!!!」