小説

□甘く甘い
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 甘く甘い







「一護なんか大っきらいだー!!!」


そう言われたのは二日前。
原因はいつもと変わりないささいな口論。

カッとなって言い合って、しばらくするとどちらともなく謝ってくる。
それが普通のパターン。

けど、今回は違った。

喧嘩の発端は一護の嫉妬。
それをさらに引き立たせたは調子に乗って茶化したルキア。

だから、二人とも謝らなかった。

そして、今、学校に至る。

「ねぇねぇ、朽木さんはさぁ〜バレンタインどうするの?」

「バレンタイン…?…あっ」

「あ〜!もしかして忘れてた!?」

「え、あ、まぁ」

「ま、いいや。それで、誰かにあげる予定とかある?」

今の今まですっかり忘れていたルキアには予定なんかなかった。

「今のところありませんわ」

「そう?」

「ええ」

そう、今は二月の中旬。
女の子も男の子もそわそわし出す季節。
バレンタインの二日前だった。

「バレンタイン…か。そういえばもうそんな時期か」

「別に関係ねぇし」

「一護には愛しの本命がくれるって保証付きだもんね」

「けっ。どうかな」

「喧嘩でもした?」

水色にそう言われて少し戸惑う一護。

「まぁな。もう二日も口聞いてねぇし」

「早く仲直りしなよ?」

「あ〜…」

曖昧な返事をする一護を横目に、水色はケータイをいじりながら言った。

「朽木さん待ってたりしてね」

一護は何も答えず、遠目にルキアを盗み見た。

「予定ないって言っても、黒崎君にはあげるんでしょ?」

「え?」

予想外の井上の問いかけに、みっともない声が出てしまった。
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