短くどうにか

□自分のために
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「中学の内申や勉強は良い高校行くのに必要なんだよ。」



俺は言われてむっとした。
そんなこと俺だって知っている。
最近じゃ私立高校に入るのに金だけじゃなく頭がいることぐらい常識だ。

「だから?何なんスか。」

「お前馬鹿だろ。いいか?良い高校に行ったらそこでも勉強頑張って、良い大学に行くの。」


あからさまに不機嫌になった南沢さんを少し不思議に思いながらも、俺はへえ、なんて曖昧な相槌をうつ。

「それで、良い大学に行ったら、今度は大手優良企業に就職する。」

言い切ったところで南沢さんは顔を上げ、俺を見た。
真剣な表情にどぎまぎしながら、次の言葉を待つ。

「就職して、金作って、」

南沢さんはそこで言葉を区切りかけていた眼鏡を外した。
あ、勿体ない。なんて雰囲気から言えなかった。
俺はその代わりに続きを促す。


「金作って、なんスか…?」

「お前一人くらい養えるようになる。」

「え、」

突然の出来事に頭が上手く回らない。
どういうことだ、えっと…。


「甲斐性なしはキツいだろ」

思考がまとまらない俺を横目に、そう言って目を細めて笑う南沢さんはなんだか可笑しかった。


「だから勉強の邪魔すんなよ。」

「なら俺がアンタを養います。」

深く考えず口にしてみると、消しゴムが額に向かって飛んできた。

「はぁ、馬鹿だろ。まず俺よりいい成績取ってから言えよ。」

消しゴムを投げ返すと、さんきゅ、とだけ呟いてまたテキストに向かいだす南沢さん。
でも先ほどまで感じていた構ってもらえない寂しさはもうなかった。





君のため。いいえ、俺のため。


→後書き+α

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