過去ぱち(・ω・`)

□拍手連載まとめ
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俺が、『奴ら』を見えるようになったのは7歳の誕生日の日だった。

母さんがいつも通りケーキを買ってきてくれて、父さんが早めに仕事を切り上げてくれて、トキコさん(家政婦)が俺のために部屋を飾り付けてくれた。
そんな幸せな空間に異質な『奴ら』がいた。俺が初めて見たのは小さな『何か』だった。
例えるなら一つ目小僧、そんな感じ。

俺はまだ、うまく状況が飲み込めなくて、母さんや父さん、トキコさんにも何も言えないまま七歳の誕生日パーティーを内心憂鬱なまま過ごした。



それから何年かすると、更に俺の左目は『奴ら』をとらえるようになってしまった。
学校でも家でもあちらこちらで喚く喚く。うるさい、黙れ。
学校で妙な行動をとれば笑い物にされた。うるさい、人間も『奴ら』も、みんな。黙れよ。頼むから。
ノイローゼ気味になっていた俺にトキコさんが気がついた。


「典人様、最近具合が優れないようですが」

「すみません。…この家は、騒がしくて」


トキコさんは静かに頷くと、にこりと愛想良く笑って「承知しました坊ちゃん」と言って部屋を出て行った。


「…坊ちゃんはやめて欲しいな…、あ…え…。」


ふと気がつくと家中に響いていた『奴ら』の声が止んでいた。
まさか、トキコさんが…?


「ま、偶然だよな…」


そのうちまた騒がしくなる、そう思っていた。しかしそれっきり『奴ら』の声どころか姿までもを家で見ることがなくなった。


「トキコさんって何者…」

「ただの家政婦にございますよ坊ちゃん」

「!」


背後に立たれていて驚いた。
まじでトキコさん何者…。


「俺、部屋行きますね」

「はい。お食事の準備が出来次第お呼びいたします。」








「ふぅ…。」


俺はベッドに寝ころび、漫画を手に取る。
小六にもなれば大体の漢字は読める。ペラペラとページをめくっていると一枚の紙がベッドと壁の間に落ちた。


「あ!やべっ」


恐らく落ちたのは何かの応募券。俺は必死に手首を小さな隙間へと突っ込み、指先の感覚だけで落とした紙を拾い上げようとする。
かさ、と紙のようなものが人差し指をかすめた。もう一度手探りでかすめたそれを探し当てると、中指と人差し指で辛うじてつかみ上げベッドの上に置いた。


「あ、これ…。」






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微妙なところで切ってしまってすみません。
倉間くん視点でした。


 
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